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たかが芸人
第二章

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第二章

 騒動が起こった。麦助が贔屓をしているその球団がだ。ドラフトのルールを破ってまだ中学生の選手を指名してきたのである。
 これには世論も呆れた。
「おい、幾ら何でもそれはないだろ」
「幾ら天才でもまだ中学生だろ」
「それでも指名するか?」
「何処まで無法なんだ」
 誰もが唖然となり批判した。しかしである。
 麦助はだ。こう力説したのだった。
「いや、あれはいいんだよ」
「何でいいんだ?」
「全然理屈に合わないだろ」
「相手は中学生だぞ」
「若い優れた人材を世に出すんだよ」
 これが麦助の主張であった。
「それっていいことじゃないか」
「御前そりゃ虚塵のオーナーの言葉じゃないか」
「完全にオウム返しじゃないか」
「それでいいのかよ」
「オーナーの言葉にも一理あるじゃないか」
 あくまでこう言うのだった。
「そうじゃないのか?」
「さて、その時が来たで」
 村野は麦助のこうした発言を聞いて言った。
「機は熟したりや」
「そうなんですか」
「今なんですか」
「そや。あいつは自分で自分の墓穴を掘ったんや」
 こう周りに話すのだった。
「後はそこに落ちるだけや」
「だといいんですがね」
「そうなれば」
「絶対になる。自分で落ちるで」
 彼はこう断言した。そしてである。
 深夜のテレビ番組でもこのことが議題に挙げられた。そこにはプロ野球選手会からも選手会長が来て話をする。麦助は呼ばれないのに来た。
「やっぱり俺が来ないと駄目だろ」
「いや、あんた呼ぶ予定なかったんだけれど」
 司会者の男が彼にこう言う。
「あんたの事務所がどうしてもって言うしね」
「そりゃそうだろ。俺は野球通だからな」
「あんたは只の太鼓持ちじゃないの?」
 司会者がここまで言ってもだ。麦助は平気だった。
「俺は野球のことは何でも知ってるんだ。聞いてくれよ」
「だといいけれどね」
「俺の席はここだな」
 その仕方なく用意された席に着いてであった。議論に無理矢理加わったのだった。
 選手会長はだ。真面目な態度で話した。
「やっぱりこれはやっちゃいけないことなんですよ」
「うん、そうですよね」
「流石にね」
 周りもその言葉に頷く。
「中学生ですしね、彼は」
「それを考えたら」
「それをあえてやった。選手会としては反対します」
 こう言い終えるとだった。麦助が言った。
「いや、選手会が反対してもね」
「反対しても?」
「何かあるんですか?」
「もう指名したじゃないですか」
 彼はこう主張するのだった。

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