少しでも前に進めたら
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―――――――だけど。
(ほんの少しでも過去を乗り越える事で、ティアさんが前に進めたら―――――!)
0と1は違う。
進まないとの、1歩進む事は違う。
ただ数が増えただけだけど、0が1になる事は大きな事だ。
「なっ・・・・何だ、コイツは・・・」
ザイールは目を見開く。
先ほどまでと変わらない、ジュビアのはずだ。
なのに―――――なのに。
「シェラアアアアアアアッ!」
その青い目に強い意志を持ち、全身を水へと変え、床を削るような勢いで向かってくるジュビア。
先ほど、ザイールがグレイのフリをしていた事に怒っていたのとは違う、怒りでありながら怒りとは言い切れない感情。
(・・・そうか)
全てで表される意志に気づくのに、時間はかからなかった。
だから、避ける事をしない。
魔法陣を展開させる訳でもなく、ザイールはただ立っていた。
右手に集中させた魔力が、ふわりと消える。
(他の為に戦っている時・・・それが、妖精の尻尾が最も強い時)
だからだ、と思った。
戦力とか、人数とか、そういう事ではない。
幽鬼の支配者が勝てなかったのは―――――こういう事なのだ。
(彼奴等を敵に回そうと考えた時点で、俺達の敗北は決まっていたのか・・・)
無意識に、微笑む。
その笑みは自然なもので、どこか清々しさを感じさせた。
黒いつり気味の目を細め、呟く。
「―――――――滑稽な」
その言葉は、誰かに向けたモノではない。
言うならば―――――自分に向けたモノ。
幽鬼の支配者時代にあれ程反対した妖精の尻尾との戦。
なのに―――――今、自分は妖精の尻尾と対峙している。
(馬鹿げているな・・・滑稽すぎて―――――)
結局、同じだった。
所属するギルドが違うと言うだけで、結果的には同じ。
妖精の尻尾を敵に回した事に、変わりはない。
「――――――笑えない」
そう呟いた、刹那。
「水流激鋸!!!!」
ザイールは、ジュビアの水に呑み込まれた。
声はない。悲鳴の1つも響かない。
だが、濡れたザイールは床に抵抗なく落下し、傷だらけだった。
ゴロリ、と床を転がったザイールは大きく息を吸い込む。
「はぁッ・・・流石、元エレメント4、と言ったところか・・・」
喘ぎながら、ザイールはジュビアに目を向ける。
が、ジュビアはジュビアで、魔轟爆陣のダメージや魔力消費で座り込んでおり、両者共に動けない状況にある
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