第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百九 〜エン州、再び〜
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一旦皆の所に戻り、華琳との接見について話した。
「ひとまず、通過の許可が得られたのは何よりですね」
「そうね。進退窮まる事だけはなくなったわ」
胸を撫で下ろす月の隣で、詠は難しい顔つきをしている。
「兎に角、徐州に入る事が第一だ。霞と彩は先行せよ、指揮は朱里が執れ」
「はわわ、わ、私がですか?」
「そうだ。この中で誰よりも徐州に通じているのはお前だ」
暫し逡巡の色を見せていた朱里だが、ややあって顔を上げた。
「……わかりました。頑張りましゅ!……あう」
「にゃはは、カミカミじゃ説得力がないのだ」
「ほな、ウチらは早速準備やな」
「うむ。殿、先に徐州でお待ちしております」
我が軍の中で、二人が率いる隊は機動力において群を抜いている。
「歳三様。陳留に同道する者は如何致しましょう?」
「うむ」
ジッと、皆が私の言葉に聞き入ろうとする。
華琳には他意などないであろう、本来は私一人でも構わぬぐらいだ。
だが、皆はそうは行くまい。
「兵は二十名ほどでよい。大袈裟にすれば華琳の手を煩わせよう」
「御意。では、選抜は私の方で」
「頼む。……他には、雛里と鈴々に供を頼む」
「あわわ、わ、私ですか?」
「任せろなのだ! お兄ちゃんは鈴々が守るのだ!」
愛紗らは何か言いたげであったが、私は静かに頭を振った。
「お父様。では残りの兵は私が率いれば宜しいのですね?」
「そうだ、月。皆も頼んだぞ」
思うところは各々あるであろうが、あまり華琳を待たせる訳にもいかぬ。
「それから風。念のため、冀州の情勢も調べておけ」
「御意ー。審栄さんの行方を捜せば良いのですねー?」
「それもある。麗羽にも内々に助力を仰がねばなるまいが」
私を仕留め損ねた事は審栄もすぐに知るところとなろう。
華琳の勢力内で事を起こす事は叶わぬであろうが、油断はならぬ。
「雛里ちゃん。大丈夫?」
「う、うん。朱里ちゃんこそ、大役だよね?」
頷き合う二人。
常に寄り添ってきたからこそ、不安が顔に滲み出ている。
だが、いつまでもそうしている事は二人の為にはならぬ事。
それ故、朱里には大任を与える一方で雛里を連れて行く事とした。
あの諸葛亮と鳳統なのだ、期待に背く事はなかろう。
雛里とて、ただ単に陳留見物をするだけとは思ってはいまい。
「言っておくが鈴々。物見遊山ではないのだぞ?」
「わかっているのだ、愛紗。愛紗は心配性なのだ」
「お前がもっと自覚を持てばこのような事は言わん!」
……この二人が変わる事はまずあり得ぬのかも知れぬ。
「歳三様。まるで実の父親みたいなお顔ですよ?」
「む」
知らず知らずのうちに、苦笑
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