暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百九 〜エン州、再び〜
[6/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


 一旦皆の所に戻り、華琳との接見について話した。

「ひとまず、通過の許可が得られたのは何よりですね」
「そうね。進退窮まる事だけはなくなったわ」

 胸を撫で下ろす月の隣で、詠は難しい顔つきをしている。

「兎に角、徐州に入る事が第一だ。霞と彩は先行せよ、指揮は朱里が執れ」
「はわわ、わ、私がですか?」
「そうだ。この中で誰よりも徐州に通じているのはお前だ」

 暫し逡巡の色を見せていた朱里だが、ややあって顔を上げた。

「……わかりました。頑張りましゅ!……あう」
「にゃはは、カミカミじゃ説得力がないのだ」
「ほな、ウチらは早速準備やな」
「うむ。殿、先に徐州でお待ちしております」

 我が軍の中で、二人が率いる隊は機動力において群を抜いている。

「歳三様。陳留に同道する者は如何致しましょう?」
「うむ」

 ジッと、皆が私の言葉に聞き入ろうとする。
 華琳には他意などないであろう、本来は私一人でも構わぬぐらいだ。
 だが、皆はそうは行くまい。

「兵は二十名ほどでよい。大袈裟にすれば華琳の手を煩わせよう」
「御意。では、選抜は私の方で」
「頼む。……他には、雛里と鈴々に供を頼む」
「あわわ、わ、私ですか?」
「任せろなのだ! お兄ちゃんは鈴々が守るのだ!」

 愛紗らは何か言いたげであったが、私は静かに頭を振った。

「お父様。では残りの兵は私が率いれば宜しいのですね?」
「そうだ、月。皆も頼んだぞ」

 思うところは各々あるであろうが、あまり華琳を待たせる訳にもいかぬ。

「それから風。念のため、冀州の情勢も調べておけ」
「御意ー。審栄さんの行方を捜せば良いのですねー?」
「それもある。麗羽にも内々に助力を仰がねばなるまいが」

 私を仕留め損ねた事は審栄もすぐに知るところとなろう。
 華琳の勢力内で事を起こす事は叶わぬであろうが、油断はならぬ。

「雛里ちゃん。大丈夫?」
「う、うん。朱里ちゃんこそ、大役だよね?」

 頷き合う二人。
 常に寄り添ってきたからこそ、不安が顔に滲み出ている。
 だが、いつまでもそうしている事は二人の為にはならぬ事。
 それ故、朱里には大任を与える一方で雛里を連れて行く事とした。
 あの諸葛亮と鳳統なのだ、期待に背く事はなかろう。
 雛里とて、ただ単に陳留見物をするだけとは思ってはいまい。

「言っておくが鈴々。物見遊山ではないのだぞ?」
「わかっているのだ、愛紗。愛紗は心配性なのだ」
「お前がもっと自覚を持てばこのような事は言わん!」

 ……この二人が変わる事はまずあり得ぬのかも知れぬ。

「歳三様。まるで実の父親みたいなお顔ですよ?」
「む」

 知らず知らずのうちに、苦笑
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ