第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百九 〜エン州、再び〜
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些かでも侮って欲しかったのだが、華琳相手にはそれは叶わぬようだ。
「ところで曹操殿」
「何かしら、郭嘉?」
「はい。まだ、曹操殿御自身が此所におられる理由を伺っていません」
「ああ、そうだったわね」
華琳はジッと禀を見据えた。
「結論から言うと、偶然の産物よ。紫雲から不穏な動きは知らされたけど、その時此所に一番早く駆けつけられるのが私の隊だったというだけよ」
「見たところ、巡検の最中だったようですが?」
「ええ、そうよ。秋蘭や春蘭が近くにいれば、この場にいたのは私ではなかった。それだけの事よ」
「なるほど」
禀は、眼鏡を持ち上げた。
「では、仮に曹操殿と他の隊が同程度の距離にあった場合……どうなさいましたか?」
「そうね」
華琳は少し考えてから、
「効率の良い方を選んだかも知れないし、歳三と話がしたくて私が出張ったかも知れないわね」
「何とも酔狂な州牧殿だな」
「あら、貴方には言われたくないわ。そう思わないかしら、流琉?」
「え? え、えっと……」
いきなり話を振られた流琉は、困惑気味に私と華琳を交互に見た。
「華琳様。話は尽きないと思いますが」
「そうね、銀花」
今一度、華琳は私を見据えた。
「徐州へ向かうのでしょう? エン州の通過は認めましょう」
「良いのか?」
「認めないと言ったらどうするの?」
「そうだな。お前を人質に取るのも一興か」
「あら、随分と乱暴な手を使うのね。本心かしら?」
そう言いながらも、華琳は愉快げだ。
「さて、どうであろうな。全軍で匪賊となるやも知れぬぞ?」
「うふふ、それはそれで興味深いわ。貴方が首領なら、黄巾党とは比較にならないぐらい手応えがあるわ」
一瞬、そうなったであろう姿を思い浮かべる。
……私だけならまだしも、月には全く似合わぬな。
「華琳。対価は何か?」
「……歳三。貴方だと言ったら?」
「断る、としか言えぬな」
「でしょうね。あっさり同意するようなら、とても対価としては受け取れないもの」
形ばかりの屈服を見せたところで、華琳は満足すまい。
それが、曹操という人物たる所以だからな。
「それならば、対価は一つ。それから、私からのお願いが一つという事でどうかしら?」
「聞こう」
「対価は、以前の借りを返すという事でどう?」
「父御の件か」
「そうよ。私は借りを作ったままでは気が済まないの。例え、公私混同と言われようとね」
「……良かろう、私には異存はない」
「では、交渉成立ね。貴方の軍だから杞憂かも知れないけど、麦一粒でも奪ったりしたらこの話はなしよ?」
「うむ、徹底させるとする」
「ええ。それからお願いの方だけど」
「……以上だ」
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