第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百九 〜エン州、再び〜
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ている貴方は、更に優れているという証ね。そう思わない、銀花(荀攸)?」
傍らに控える荀攸が、華琳の言葉に首肯する。
「はい、華琳様が仰せの通りかと。先の戦い、勝利を得たのも当然でしょう」
「随分と買い被られたものだな。私は然したる事はしておらぬぞ?」
「それはご謙遜というもの。私は土方様のお働きを相応に評価したつもりですよ。叔母はそうではないようですが」
「桂花は仕方ないわ。あの娘、男というだけで問答無用で見下すんですもの」
苦笑する華琳。
「それで華琳。此所に来た理由だが」
「ああ、そうだったわね」
華琳は表情を改めた。
「歳三、審栄という名前に覚えはないかしら?」
「審栄?」
脳裏に今まで出会った者を浮かべるが、思い当たらぬ。
「禀、どうか?」
「はい。申し訳ありません、私も心当たりがありません」
そんな我らを、華琳と荀攸は興味深げに見ている。
「どうやら、本当に知らないようね?」
「うむ」
「銀花」
「はい。土方様、審配という人物ならご存じでしょう」
「審配か、無論だ」
忘れもせぬ、私が郡太守として乗り込んだ魏郡で成敗した一人だ。
む、審栄とは……。
「歳三様」
禀も気づいたようで、顔が青ざめている。
「む。荀攸、審栄なる者、審配所縁……いや、一族の者だな?」
「そうです。一族と申しますか、実子ですが」
あの時は、一族郎党を全て処刑せよという強硬な意見も確かにあった。
だが、私にはそこまでの権限はなかった。
そもそも、如何に不正を働いたとは申せ官吏を一存で処断する事自体が越権行為なのだ。
それ故、罪状を記した上で朝廷に奏上するのが関の山。
結果、三名は檻に入れた状態で洛陽に移送するよう命が下った。
その後の消息は聞かぬが、あの混乱の最中で生き存えたとも思えぬ。
「審栄なる者、土方様を恨みに思い機を窺っていたようです」
「……ふむ」
「ですが手を出そうにも周囲の警戒は常に厳重で事を起こせずにいたようです」
「だが、私の方から審栄には地の利がある冀州へと近づいた。そこを狙ったという訳か」
「その通りです」
よもや、あの時の逆恨みが真相だったとはな。
「歳三が、最初からエン州を通るならば起こり得なかったでしょうね。でも、貴方は審栄に手を出す機会を与えてしまったわ」
「…………」
返す言葉もない。
「敵同士となった私に気を許せなかったのかしら? そうだとしたら、随分と私も小さく見られたものね」
「いや、それはない。だが、要らぬ気を回し過ぎた結果だ、言い訳はせぬ」
「そうね。貴方らしくない、とだけ言っておきましょう。私の認めた歳三はそんな矮小じゃないもの」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ