第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百九 〜エン州、再び〜
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に借りを作る事になるやも知れぬが、致し方あるまい。
「だが禀。曹操は先日まで我らと戦った相手だぞ? 曹操当人はともかく、兵や将に遺恨がないと言えるのか?」
「ええ、その懸念はありますよ閃嘩(華雄)。ですが、曹操殿ならそれを封じ込めるだけの力をお持ちです」
「それに、お兄さんや月ちゃんは閃嘩ちゃんがお守りすればいいだけですよー?」
「無論だ。歳三様にも月様にも指一本触れさせんわ!」
得物を手に、胸を張る閃嘩。
「となれば、華琳に使者を送らねばなるまい。さて」
誰を選ぶか、と思案を巡らし始めた時。
「向こう岸に何か軍勢らしきものが見えます!」
見張りの兵が叫んだ。
私は手早く着替えを済ませると、望遠鏡を取り出した。
油紙に包んでおいた甲斐あって、どうやら故障はしていないようだ。
確かに旗が見えるが、何者であろうか。
……まさか、な。
「どうしたのよ、歳三」
「見てみるがいい」
そう言って、詠に望遠鏡を手渡す。
「旗が見えるわね……。って、ええっ?」
「ど、どうしたの詠ちゃん?」
「曹操の旗よ。それも、曹操本人のね」
「曹操殿御自身が?」
「何かありそうですねー」
「……ともかく、警戒は怠るな。華琳の事だ、いきなり攻撃してくるとは思えぬが」
「御意!」
皆の動きが更に慌ただしくなる。
華琳の奴、何があった?
岸辺に並んだ軍勢から、人影が進み出てきた。
「久しぶりね、歳三」
紛れもなく、華琳本人がそこにいた。
傍らには流琉、それに荀攸が控えている。
「そうだな。まさか、態々お前自身が来るとは思わなかったが」
「それはちゃんとした理由があるわ。それより、岸に上がりなさい。勿論、兵達も全員で構わないわ」
「良いのか?」
「ええ。何もしないから安心して頂戴」
「そうか。では言葉に甘えるぞ」
私の言葉に、兵らが安堵の溜息を漏らす。
やはり、この状況では船上のままでは不安なのであろう。
「恋、禀はついて参れ。他の者は後から参れ」
「……ん」
「御意です」
小舟に乗り移り、岸を目指す。
何も伝えてはおらぬが、風や朱里らが万が一に備えている筈だ。
本来は私如きが細かに指示を出さずとも皆が一人前、そして一騎当千なのだからな。
「禀。どう見る?」
「はい。曹操殿が仰せの通り、何か事情があるのでしょう。さもなくば、多忙を極めている筈の御方が歳三様だけの為に現れる筈がありません」
「うむ。問題はそれが何か、だな」
「あくまで推測ですが、曹操殿はこの一件を事前に察知したのではないかと」
と、禀は声を潜めた。
到底華琳らには聞こえぬ筈の距離だが、然りとて態々我らの会話を聞かせ
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