風吹く朔の夜、月は昇らず
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人の給仕さんと何か話していた。
「本日は『徐晃様すぺしゃるこぉす』でお持て成し致します。奥のお部屋にどうぞ!」
柔らかい言葉と微笑み、一人の給仕さんが前に出てきて、そのままゆっくりと私達を奥の部屋に先導してくれる。
進むこと幾分、如何にも特別な雰囲気の部屋に辿り着いた。
窓から見える中庭は斜陽に映されて綺麗に彩られ、部屋は綺麗な装飾で飾られていた。
「ねぇ、風ちゃん。この部屋って凄く身分の高い人とか一握りのお金持ちさんしか入れないんじゃ……」
「そですねー。風も華琳様と来る時しか入れない『夜天の間』に案内されるとは思いませんでしたよー」
――し、秋斗さんって……そんなにこの店の店長さんに気に入られてるんだ……
有り得ない程の厚待遇に疑問をそのまま、私達三人はそれぞれ席に座る。
「月ちゃんが聞いてましたが、お兄さんは『めいど』の意味を知ってるんですか?」
「うん、殺伐としたモノじゃなくて……遠く離れた国の侍女の事だ。それと喫茶というのは茶屋だな。侍女の服を纏った給仕が持て成す茶屋、それがメイド喫茶だ。ってか月の服もメイド服なんだが……」
「そうなんですか? 新作の侍女服だと思って着てましたけど……大陸の外の服とは思いませんでした」
言うと彼は頭に手を当てて押し黙った。理由を尋ねようとするも、先に風ちゃんが口を開く。
「もう一つ聞かせて欲しいのですよ。『ついんて』というのもこの店の名とは違う意味があるのではー?」
「……それはな、これも遠くの国で髪を二つに結う事をツインテ……いや、ツインテールというんだ。二号店ってことだから二つ結びに掛けたんだろう。給仕の髪型を統一してツインテの意味を押し出してるみたいだ。しかし……危ういな」
何故かすっと目を細めて、空気を張りつめさせる秋斗さんに、私と風ちゃんは少し圧される。でも疑問の方が大きくて、私はどうにか言葉を繋げた。
「その……何が危ういんでしょうか?」
「……さっき案内してくれたメイド長らしき人物だがな、三つ編みおさげはツインテか微妙なとこだ。俺は賛同しかねる」
私も風ちゃんも呆気にとられた。まさか、そんな事で彼はこんな張りつめた空気に変えてしまったのかと。
「二つに括っているのですからいいと思いますが」
「確かにそうなんだけど……もやもやするんだ。そのあたりはこの店の店長さんと論議を交わす必要があるな」
熱い眼差しはこれだけは譲れないと語りかけてくる。どうして彼が髪型一つでここまで熱くなっているのか、私には分からなかった。
「ふむ、お兄さんは『ついんて』の女の子がお好みということですか」
「まあそういう……いや、どうしてそうなる。俺の好みの問題じゃなくてだな――――」
「し、しししし失礼、致します
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