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一輪の花
第一章
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だがそれは黒焦げになり炭にさえ見えるものだった。
 その骨を見ながらだ。また弟に話す優一だった。
「おまけに草木もなくなったやろ」
「城もなくなったしな」
 広島城である。その爆弾に消し飛ばされたのである。
「全部じゃな」
「広島にはもう草木も生えんらしいぞ」
 優一は言った。
「御前の仕事先も消えたやろ」
「行ったら何もなかったわ」
 こう兄に答えた。
「兄貴のところもじゃろ」
「ああ、ない」
 一言だった。
「行ったら何もなかったわ」
「そうじゃな。これからどないする?」
「どうやって生きるかかい」
「そうじゃ。わしも兄貴も食わなあかんやろ」
 人間は食べなければならない。これはもう言うまでもないことである。とにかく食べなければ生きていけないのが人間だからである。

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