第五章
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「全くね」
「かといってそれも自慢されないし」
「本当に違うよ」
「素晴らしい方だよ」
「本当ですね」
アズチェンナは宮廷のシェフ達の笑顔での言葉に彼女もまた笑顔で頷いた、そしてだった。
王様を見続けるだ、とにかくだった。
質素で親切で飾らずしかも威張ったところはない。国王であっても腰が低く丁寧で尚且つ愛妻家だった。王妃との間に生まれている多くの子供達、王子や王女達にも優しい父親だった。
口調も丁寧だ、宮廷の者達と共に作業をすることも多い。誰かが落としものをしても自ら拾って差し出して言うのだった。
「落ちましたよ」
「あっ、陛下申し訳ありません」
「いえいえ、お気になさらずに」
こう穏やかに返す、アズチェンナはそうした場面も見た。
そのうえでだ、彼女も徐々にわかってきてだ。昼食の時に同僚達に言った。
「徐々にだけれどわかってきたわ、王妃様のお言葉がね」
「王様が綺麗だっていうあれね」
「あのお言葉ね」
「ええ、徐々にだけれどね」
だがそれでもだ、わかってきたとだ。彼女は王宮の食堂で同僚達とこの昼の昼食であるハヤシライスを大盛りで食べながら答えた。
「王様はお心なのよ」
「お心がなのね」
「お綺麗なのね」
「ええ、そうなのよ」
それでだというのだ。
「王妃様は仰っているのよ」
「王様のお心ね」
「それなのね」
「何時でもね」
王様の心はというのだ、もっと言えば行動もだ。
「素晴らしいから」
「そうよね、王様と一緒にいて不快に思ったことってないのよね」
「人の悪口も仰らないし」
「どの動物にもお優しくて」
「犬にも猫にもね」
宮廷で買われているペット達にもなのだ。
「ああした方って滅多にいないわ」
「ご自身がどんなにお疲れでも他人を気遣ってくれて」
「私達にもね」
「そうなのよね、王様って」
「普通王様ってね」
これは彼女達のイメージする王様だ。
「気取っててね」
「高貴でね」
「立派だけれどね」
「近寄り難いイメージよね」
「そうよね」
しかしだ、彼女達の王様はというと。
「全然そんなことなくて」
「声かけやすいし」
「お声も普通にかけてくれるしね」
「とてもいい方よね」
「あんないい方おられないわ」
「今だってね」
食堂の端を見る、そこでだった。
王は皆と一緒に楽しくハヤシライスを食べていた、流石にそのハヤシライスは既に毒見が慎重に為されているが。
「気さくな感じでね」
「私達と同じだし」
「楽しく談笑しながら召し上がられて」
「このハヤシライスの素材だって」
それもだった。
「普通によね」
「国民の人達の贈りものなのよね」
「牛肉も玉葱もマッシュルームも」
「御飯もおソースもね」
その全てがだ、一緒
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