第四章
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その二人を見てだ、使用人達は驚いて言った。
「あの、庭の手入れでしたら」
「私達がしますが」
「旦那様と奥様がされることはありません」
「ですから」
「いいのだ」
しかしだ、侯爵はその彼等に微笑んでこう言った。侯爵は使用人達には決して怒らずしかも待遇のいいよい雇い主である。
「これは私達が楽しんでやっていることだからな」
「つまり趣味ですか」
「それなのですか」
「そうだ」
それでだというのだ。
「だからだ、君達は君達の仕事をしてくれ」
「そうですか、それじゃあ」
「私達は私達の仕事をします」
「そうさせてもらいます」
「そうしてくれ、では今日もだ」
微笑みだ、侯爵はこの時もだった。
妻と共にラフな作業服、今はジーンズを肩からかけるやはりイギリスの農務者が着る様な服を着て百合達を植えていった、そうした日々を過ごし。
やがてだ、庭の池や川の周りがだった。
色とりどりの百合達で飾られた、優しい花々が青と緑の間に咲き誇りこの上なく見事な色彩の華を見せていた。
その百合達を見てだ、侯爵は微笑んで夫人に言った。
「いいものだな」
「はい、暇もなくなりましたし」
「しかも庭が綺麗になった」
「いいことばかりですね」
「全くだ、それにこうした身体の使い方だとな」
「スポーツと同じ様に身体を動かせて」
「しかも神経痛の負担にもならない」
侯爵にとってはそうだった。
「いいものだな」
「スポーツはそうはいかないですが」
「花を植えることはな」
それで身体を動かしてもだというのだ。
「そうは思わないな」
「それはいいことですね、では」
「これからもな」
百合を植えようというのだ、そして百合を全て植え終わると。
ここでだ、侯爵はこう夫人に言った。
「百合だけじゃなくてな」
「他のお花もですね」
「植えてみたくなったな」
こう言うのだった。
「どうもな」
「ではどのお花にされますか」
すぐにだ、夫人は笑顔でこう侯爵に問うた。
「それでは」
「賛成してくれるか、他の花を植えることにも」
「あなたが望まれるのなら」
それでいいというのだ。
「是非共」
「そうか、ではだ」
侯爵は妻の賛成の言葉に笑顔で応えた、そして話に出す花は。
「チューリップにしよう」
「チューリップですか」
「あの花は寒さにも強くしかもな」
「何よりもですね」
「我が国の花だ」
オランダの国花、だからこそだというのだ。
「是非植えよう」
「そしてこの別邸をですね」
「その花でも飾ろう、いいな」
「そうですね、それではですね」
妻も笑顔で応える、そしてだった。
二人で今度は別邸にチューリップも植えた、その花達も。百合だけでなく様々な花で飾られていった。
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