『孔雀』と『雪風』
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することも叶わぬ早さで振るわれた、彼にとっては一撃というにもおこがましい一撃は軽々と邪魔者を吹き飛ばす。
だが、再び思案を続けようとした伊坂は復活して初めての衝撃を受ける。
「…!……。」
「…何?!」
自分が突き飛ばした少女は生きていた。
それどこら怪我すらしていなかったのだ。
確かに、自分は明確な殺意を持って攻撃したわけではない
ただ、邪魔をするなと突き飛ばしただけだ
だが、突き飛ばされた少女は痛みに顔を一瞬歪めー
それだけだった。
見た目は華奢で儚い子どもに過ぎないこの少女が、学院において抜きん出た実力者である事。
その姿、年齢からは想像も出来ないほどに過酷な経験と苛烈な戦いを生き抜いてきた事など男は知らない。
だが、それを知った所で、なんの慰めにもなりはしない。
自分と人間の間にある力の差はそのような次元の話ではないのだ。
その、衝撃によりようやく、自分の体が鉛の様に重い事
を知覚する。
そして、もう一つの衝撃『双月』の存在を視認した彼は、目の前の雑音達の存在を初めて認め、問いかける。
言葉は通じない、だが直接、対象の精神に語りかける『念話』の能力を持つ彼にとっては他種族との意思疎通など容易いことだ。
『ここはどこだ、何故、私は封印をとかれている』
少女がその問いに満足な答えを返してやることは叶わなかったが。
少なくとも、自分を元の世界に還す手段が無いということだけは理解した。
そして、その事実を知った時、彼の胸に薄れていた感情が蠢いた。
もし、自分が元の世界に戻れなければ、自身の種族はどうなるのだ?
もしもこの世界で自分が力つきた場合、統制者たるモノリスは自分を回収するのだろうか。
そして『次』のバトルファイトに自分は再び参加出来るのだろうか?
もしも…自分の存在が消えたことで自身の種族までもが消滅する事になったら?
傲岸不遜なこの男とて種族の長だ、長年の繰り返しにより些か磨耗しすぎていた想いは現状への絶望と併せ、彼を打ちのめした。
だから、少女の言葉を振り払う事が出来なかった。
『貴方に協力をする代わりに、私に貴方の力を貸して欲しい』
自分を召喚した少女、『雪風』のタバサの言葉を。
結果、この男は以前のバトルファイトで名乗った『伊坂』という名前を名乗り姿を『人間』に変えて『タバサ』と名乗った少女に協力することにした。
…態々擬態する必要など無かった、という事は人間など遥かに越える知性で習得した言語と共に後に理解したのだが。
そして、協力関係は結ぶと言ったが『コントラクトサーヴァント』は断った。
人間の下僕としての証を刻まれるなど許容できることでないし、タバサもそれを了承した。
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