第五十九話「“レアヴロード”の侵攻」
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「ただし、ブランクは殺すな。奴も適合者だ。仲間として引き込みたい」
「行くぞ」
スコーピオの言葉と同時に、適合者達は防壁から飛び降りた。
8つの絶望が降り立った………………
―――同時刻
ブランクは既に白骨化した兵士の遺品を、丁寧に拾い続けた。
兵士達の遺体が持っていた遺品は多種多様だった。
家族の写真。
結婚指輪。
ドッグタグ。
恋人のイニシャルが彫られたネックレス。
拾える物は丁寧に拾い、損傷が激しい物は欠片だけを拾い、ポケットに入れる。
そして、出会った遺体には全て目を閉じて短い黙祷を捧げた。
道中で何度か感染者に襲われたが、それも難なく倒す。
出来るだけ遺体に血が飛ばないように、これまでのような血肉が飛び散る“投げる”技は使わない。
ザザッ ガガーーーーッ
ブランクの無線機に通信が入ってきた。
『おう、ブランク。悪いな、途中で単独行動をさせちまって』
「気にするな。そっちは大丈夫か?」
『あぁ、なんとか全員生きてる』
レックスはブランクの遺品回収に付き合っていたが、途中でレックスの無線機に救援要請が入ったために、
ブランクから離れることになった。
『なぁ、ブランク。遺品回収も重要だけどよ…………お前、感染者を単独100体殺すノルマが………』
「お前と離れてからもう71体殺したよ、心配しなくていい」
『え?…………71体!?』
ブランクのさらっとした口調に騙され、危うくレックスは71体という数を聞き逃すところだった。
そもそも、ブランクとレックスが別行動になってまだ30分しか経っていない。
そんな短時間で71体という数を倒すなんて、もはやベテランの域を通り越している。
『そ、そうか。その調子なら何も心配しなくていいな。じゃあ頑張れ』
通信を切られた。
「まだノルマを達成していない。さて、そろそろ…………」
ザザッ ザザザッ ガーーーーーッ
気合いを入れ直したところで、再び無線機に通信が入ってきた。
『……………………………』
無線の向こうからは、一向に声が聞こえない。
「………?」
しばらく無線機に耳を傾けていると……………
『ごきげんよう、兵士諸君』
ブランクはその声に聞き覚えがあった。
かつて、自分達と共に感染者と戦った元同胞の声だ。
『これから始まるのは地獄だ』
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