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やはり俺がワイルドな交友関係を結ぶなんてまちがっている。
結果として、比企谷八幡はまた独りになる。
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「小町」

名前を呼んで言葉を遮る。
納得がいかないという表情の小町に背を向け、この話は終わりだとばかりに階段を登りはじめる。

実のところ、二人とはあの日以来一度も会っていなかった。

家のゴタゴタやらなんやらで学校に行けていないから。
それはきっと言い訳なのだろう。感情に疎い俺にも分かる感情くらいある。

俺は多分怖いのだ。今二人に会うのが、怖い。

ホームに出るとうららかな陽射しが差し込んできた。
キャリーケースに入ったカマクラがふすん、と鼻を鳴らす。

小町と二人で突っ立って電車をまっていると、ふるりとケータイが揺れた。
取り出して確認すると雪ノ下からのメールだった。
こんな時間に珍しいな、と思いつつも中身は見ずにポケットにしまう。
どうせいつもの生存確認メールだろう。

学校を休むようになって二日三日は、由比ヶ浜と合わせてウンザリするほどの数が来ていたが、先生が事情を話したのか、今はそれほどでもない。
それでも一日一通は必ず送られてくる。

つーか俺雪ノ下にアドレス教えたっけ?
まあ、あれだろう。由比ヶ浜あたりから教えてもらったのだろう。
女子の情報網って恐ろしいしな。特にキモい男子の悪口とか。あれは一瞬で学校中に広まるからな。
え? 何か妙に実感こもってるって? 嫌だなぁ。俺はそもそも存在を認知されていないから関係ないよ。うん、ホント。

『5番線、電車が参ります。白線の内側でお待ちください』

俺たちのホームにアナウンスが流れた。
この電車に乗れば、俺は千葉の比企谷八幡ではなくなる。
さらば、千葉。愛しのマイホームタウン。

そんな千葉愛に満ちた俺にとっては当然の感慨を抱いていると。
小町が今度は俺の前にまわりこみ、強い視線を向けてきた。

「ーーお兄ちゃん、結衣さんと雪乃さんを呼ぼう」

「お前、まだーー」

言葉は最後まで続けさせてもらえなかった。

「やっぱりダメだよ、こんな別れ方」

「別に誰に迷惑をかけてるわけでもないだろ。むしろ今から二人を呼び出すほうが迷惑だ」

二人をこんな時間に外に連れ出すのも迷惑だし、俺たちが遅れれば、向こうで迎えにきてくれる叔父さんにも迷惑がかかる。

「そんなの言い訳だよ。叔父さんには遅れるって連絡入れれば良いだけだし」

「……………」

「それに」

小町はそこで言葉を区切り。

「それに、結衣さんだって雪乃さんだって、お兄ちゃんに呼び出されたんなら絶対来てくれるよ」

確信に満ちた目が俺に、分かっているだろう、と無言のうちに問うてくる。

「…………知ってる」

ああ
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