第十一章 追憶の二重奏
第九話 新たな光
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イバーの姿に、ルイズは戸惑った声を上げる。セイバーは三体のヨルムンガンドと戦っていたはずなのに何故ここにいるのだと疑問を乗せた視線を向けるルイズ。
まさか倒したのかと先程までセイバーが戦っていた場所に目を向けると、こちらに迫り来る三体のヨルムンガンドの姿が飛び込んで来る。思わずくぐもった悲鳴を上げながら、セイバーに顔を向けたルイズは、そこで違和感を感じた。
「っ!? アルトっ、その腕っ!?」
ブラリと力なく垂れ下げられた左腕。
不自然な形を見せるその左腕は、明らかに骨が折れていた。
「ど、どうしたのよそれ!? ―――っ、まさか」
自分がセイバーに助けられた事を思い出し、まさかと思うルイズに声がかけられる。
「……少しばかり油断があったようです」
―――嘘だ。
セイバーの苦笑混じりに告げられる言葉を、ルイズは即座に否定する。
三体のヨルムンガンドによる竜をも数秒で肉塊に変えてしまえる程の猛激を耐えるどころか、僅かではあったが押していたセイバーの姿をルイズは見ていた。だからといってセイバーが油断をするとはルイズには思えず。更にあれだけの怪我を負うような失策を彼女がするとは考えにくい。
ならば、あの左腕の怪我の原因は直ぐに出る。
自分だ。
自分を助けるために、セイバーは無理をした。
そのため負うはずがなかった怪我を負ってしまった。
怪我による影響は大きい。
両手を使って何とか互角に三体のヨルムンガンドと渡り合っていたのが、右腕しか使えない。しかも、ロングビルたちの魔力は殆んど底を尽いているため、戦力としての当てがつかない状況である。ならば、先程までロングビルたちが相対していたヨルムンガンドの相手は自然とセイバーが相手することになる。
左腕が折れた状態で、ヨルムンガンド四体と戦う。
それはもはや可能不可能ではなく、既に無理無謀の領域であった。
一気に押し込まれ叩き潰される。
少し考えれば誰でも分かること。
―――しかし、セイバーは揺るがない。
右手に握ったデュランダルを、ルイズを襲ったヨルムンガンド、そしてこちらに迫り来る三体のヨルムンガンドに向けるセイバー。迫り来る絶望の姿に、怯えた子犬のように身体を震わせるルイズ。その震える視界の隅に、金色の髪の隙間から横顔を覗かせたセイバーが映る。
え?
笑って、いる?
「ルイズ、昨夜私が言った事を覚えていますか?」
「え?」
昨夜?
え?
それって―――
「私の考えは今でも変わりませんよ」
「―――ぁ」
反射的に声を上げようとした。
何を言おうとしたのか自分でも分からないが、気付いた時には口を開けていた。
しかし、それが形となって
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