第十一章 追憶の二重奏
第九話 新たな光
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に、しかし弾むように喜びに満ちた声が上がる。
自信に満ち溢れたルイズの声が続くに連れ、溢れ出るまま激しく吹き荒れる魔力が緩やかになっていく。木々を薙ぎ倒さんとばかりに吹き荒れていた風は、枝を微かに揺らすだけとなり。ルイズの姿を隠していた魔力の竜巻はゆっくりとその姿を崩していく。
残りのヨルムンガンドはその隙を逃さず、セイバーを無視し、杖を天に掲げるルイズに向かって殺到する。地響きを立てながら、削岩機のように地面を削りながらルイズに襲いかかろうとするヨルムンガンドたちを、しかし、セイバーは追うことなくただ眺めているだけであった。
駆ける勢いのままルイズを押し潰そうとするヨルムンガンドたち。その隙間から微かに見える頭上に杖を掲げたまま動かないルイズ。慌てた様子も、怯えた様子も見えない。
ただ、あるがままの自然な姿で立っている。
セイバーはその姿を見て目を細めると、口の端を曲げ―――
「答えは出たようですね」
―――小さく笑った。
ユル・エオー・イースー……。
呪文が完成し、光が生まれた。
“ディスペル・マジック”の光だ。
太陽が生まれたかの如く光の爆発に、咄嗟にキュルケたちは目を閉じ顔の前に手を翳す。ルイズを中心に円状に光が広がった光は、瞬きの間もなく半径百メートルを超える巨大なドームとなり、ヨルムンガンドやセイバーたちを包み込んでいく。数秒の間を置き、ゆっくりと光が収縮し、ルイズの元に還っていった。
光が収まり、キュルケたちは顔に翳した手を外し目を開いた。
「……びっくり」
「はぁ〜……驚いたわね」
「これは……想像以上だわ」
まんまるに見開かれたキュルケたちの目に映るのは、巨大な三体の人形。
呆けたように開いたキュルケたちの口からは、驚き、驚愕、感嘆の声が漏れる。
打ち捨てられたように地面に倒れ伏し、ピクリとも動く気配を見せない。今はもう、人の形をした岩のようだ。人間のようなヨルムンガンドたちの姿はもう何処にもない。ヨルムンガンドをヨルムンガンド足らしめていた源が、消え去ってしまったのだろう。
ルイズの手により。
ディスペル・マジック。
それは“解除”の魔法。
ありとあらゆる魔法を打ち消す魔法。
その結果、系統魔法も先住魔法も関係なく全てを打ち消されたヨルムンガンドは、ただの人の形をした石の塊となってしまっていた。
ヨルムンガンドを無力化したルイズは、掲げていた杖を下ろすと小さく首を傾けゆっくりと息を吐き空を仰ぎ見る。
目を細め蒼く輝く空を見上げ、眩しげに目を細めたルイズは幸せそうに口元を緩めた。
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