第十一章 追憶の二重奏
第九話 新たな光
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。つい先程まで絶望と悲しみで氷のように冷え込んでいた身体が、今はもう、春の陽気を受けたかのようにぽかぽかと暖かく。
キュルケやロングビルたちの上げる悲鳴混じりの声も、逃げるように叫ぶ声も遠くに聞こえ……。
ただ……ただ、心地の良い暖かさに身を預け……。
「“エクスプロージョン”」
溢れ出る想いのまま囁くように告げる。
それは“爆発”の魔法。
ルイズが最初に覚えた、最も身近で馴染みの深い魔法。
詠唱が長ければ長いほどその力は発揮される。
しかし―――長々と詠唱はしない。
何故ならば、する必要がないからだ。
身体の奥、心の奥底から溢れ出る光をほんの少しだけすくい取ってみたら……ほら、呪文なんて完成させなくてもはち切れてしまいそうな程の魔力が身体を巡る。
後は、その魔力に行き先を指し示して上げるだけで―――。
ポゥっと、白い光がルイズの頭上に灯り、それに落ちてきたヨルムンガンドの足先が触れる。
―――瞬間。
『―――ッ―――!!?』
一瞬にして光はヨルムンガンドの巨体を包み込むほどに広がり、そして―――
「―――……凄い」
「これは……まいったわね」
「はぁ……驚いた」
唐突に光は音もなく消え去り、後には何も残らなかった。
白い光に飲み込まれたヨルムンガンドは、文字通り跡形もなく消え去っていた。
音も衝撃も何もなく、全てを消し去られたヨルムンガンド。
その余りにも現実離れした光景に、誰もが呆然と立ち尽くしている。
そんな周りの様子を首を巡らし見たルイズは、胸元に置いていた杖を握る右手をすっと空へと向け。
「「「「――――――ッ!!??」」」」
―――同時に、“圧”、が吹き荒れた。
『―――っな?! う、嘘でしょっ!! 何なのよこれはッ!!?』
ルイズを中心に、竜巻の如き渦が巻いている。
渦は風ではなく、魔力により出来ていた。触れられる程の密度を持った魔力で出来た渦は加速度的に巨大になり、ヨルムンガンドでさえ仰ぎ見る程の巨大な竜巻の姿となる。
渦を巻く魔力は風を生み、周囲には地面に伏せなければ吹き飛ばされる程の強大な風が吹き荒れている。吹き飛ばされまいとロングビルたちは慌てて地面に伏せて耐え忍んでいる。ヨルムンガンドたちでさえ、余りの風に立っておられず、頭を垂れるかのように地面に膝をついていた。
『こ、こんな馬鹿げた魔力を一体何処から―――ッ!!?』
ミョズニトニルンの悲鳴混じりの声が風に紛れて上がる中、
ウル・スリサーズ・アンスール・ケン……。
詠い声が響く。
ギューフー・ニィド・ナウシズ……。
静かに囁くよう
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