第十一章 追憶の二重奏
第九話 新たな光
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る。
この気持ちだけは―――。
その事に気付けば、もう、大丈夫。
ああ―――後から―――後から溢れ出してくる。
ただ、気付けば良かっただけだったんだ。
精神力が足りない?
長年溜めていた精神力が切れてしまったから?
っふふ、そんな事はない。
ただ、違っただけ。
勘違いしていただけなのだ。
魔法には精神力が必要。
そして、精神力は心の強さ―――強い感情。
わたしがこれまで魔法を使う時に使用していたのは、心の底でドロドロと渦巻いていた、物心ついた時から溜まり始めた怒りや悲しみ等の負の感情だった。溜まっていたその感情を使って今まで魔法を使っていたけど、その貯金が切れてしまってわたしは魔法が使えなくなってしまった。でも、それは当たり前のこと。
だって、そう。
シロウに出会ってから、わたしにそんな感情が溜まるのは殆んどなくなったから。だから、切れてしまうのは当たり前。
じゃあ、どうする?
負の感情がたまらなくなったら?
もう、何も出来ない?
……そんな事はない。
視点を変えれば答えは直ぐに分かることだった。
別のものを使えばいいのだ。
だって、シロウに出会って負の感情が少なくなったのと比例して、増えていったものがある。
それは喜び、慈み、愛―――正の感情。
開けてしまえば、それは前のそれとは比較にならないもの。
怒りや憎しみは地の底でドロドロと渦を巻くマグマのようなものだ。使えば確かに威力は大きい、でも、ただそれだけ。後がない。派手に数回使えば、溜まっていたものなんてあっと言う間に枯れ果てなくなってしまう。
でも、これは違う。
負の感情である地の底で渦を巻くマグマのようなそれは有限であるが、天の頂きで世界に光を満たす太陽の如き正の感情は無限。
わたしが生きている限りずっと光り続ける。
怒りや嫉妬、憎しみなんて比較になりはしない。
その証拠に。
溢れ出る光を掬っただけで、ほら―――
「―――ありがとう―――シロウ」
頭上に落ちる巨大な影。
重く風を切る鈍い音。
見ずともその巨大さを強制的に理解させられる。
それが頭上に。
しかし、ルイズは全くと言って気にならない。このままでは確実に踏み潰され死んでしまうにも関わらず、ルイズは逃げも騒ぎもせずにただ自然のまま立っているだけ。杖を握る右手を左手で包み込み、緩やかなリズムを刻む胸の上に置く。「とくん、とくん」と微睡みを誘う落ち着いた鼓動に耳を傾けながら、穏やかな気持ちで、薄く開いた目で世界を見つめる。今の自分の心のように、世界を広く大きく見渡せていた。鼓動が一つ鳴る度に、心の奥から光が溢れ、身体を内から満たしていく
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