第十一章 追憶の二重奏
第九話 新たな光
[1/19]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
「ミョズニトニルン―――ッ! 貴様一体ワルドに何をしたぁっ!!」
殴りつけるように放たれた士郎の声が空間を揺さぶる。
内包されたものは怒り。
しかし、それはもはや怒声と言うもののレベルではなく、含まれたものの質も大きさも桁が違い、既に別のナニカに変わっていた。一種の攻撃に近いモノとなったソレにより、森の木々は大きく軋みを上げ、戦闘態勢であったはずのロングビルたちの膝が砕かれたかのように力を失い地面に座り込んでしまう。
立ち続ける者の姿は五つ。
命なきゴーレムであるヨルムンガンド。
獣と化したワルド。
そしてセイバーである。
セイバーは自分を取り囲むように立つヨルムンガンドに剣を構えたままであった。背後から突然響いた叩きつけるような士郎の怒声にもピクリとも剣先を動かすことなく、視線も油断なくヨルムンガンドを睨みつけ離れない。ヨルムンガンドが一瞬でも隙を見せれば飛びかかり斬り伏せられるように力を溜めたまま、ギリギリと引き絞られた弓矢の如き姿。
士郎の怒声が響き渡り氷着いたように固まった空間に風が吹き、時が動き出す。
最初に動いたのはワルド。
赤く染まった眼を限界まで見開き、唇を捲り上げ野獣の如く歯を剥き出しにすると、飛びかかろうと膝を曲げ―――
『―――待ちなさい』
ビダリと、固まった。
まるで時を止められたかのように一瞬で動きを止めたワルドは、飛びかかろうとした姿勢のまま石像のように動かなくなる。
それを行ったのはセイバーの眼前。
両足を切断され地に体を伏せたまま、上半身だけを起き上がらせたヨルムンガンドであった。
『ふふ……そんなに怒るとは思わなかったわ。何? 敵同士だと思ってたけど違ったのかしら?』
揶揄うような声がヨルムンガンドの顔から放たれる。
「……聞いているのは何をしたかだ。答えろミョズニトニルン。一体貴様は―――貴様たちはワルドに何をした」
先程の爆発したかのような怒声から一転して、士郎の問いは奇妙なほど静かなものとなっていた。
だが、だからといってソレは平然と聞いていられるようなものでは到底なかった。
鋭く冷たい―――氷で出来た刃のような声は、耳から侵入し身体の中から氷の剣で刺し貫かれるような恐ろしさが感じられ。雪風の名を持つタバサでさえ、地面に膝を着いた姿のまま寒気のような怖気にブルリと身体を震わせた。
『そう、ね。ふふ……いいわ。特別に教えてあげる』
地に伏せたヨルムンガンドの首が動き、像のように動きを止めたワルドに向けられる。
『でも、単純に教えるって言うのも面白みに欠けるし……そうね、まずはヒントから教えてあげる』
そう言うと、ヨルムンガンドは手を動かしセイバーを取り囲む一体を指差す。
『
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ