第二部 vs.にんげん!
第21話 もう、いいよ。
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魔物達に対抗できない。実際に壁新聞には全く太刀打ちできていないと書かれていた。僕には、一人の命と引き替えに柱を壊すなんてできない……」
「あたしだったら世界の半分の人と引き替えにだって、自分が生きていたいよ」
ジェシカが呟いた。
「あいつが死んじゃったっていうなら仕方ないけどさ……まだ助かるんだよ? まだ生きてるんだよ!? ぶっちゃけあたしあいつの事嫌いだけどさ、流石にかわいそ過ぎんじゃん! ウェルドもノエルも助かって自分だけ死ななきゃいけないなんてさ、しかもずっとつるんでた相手に見殺しにされてさ!」
紅潮した顔を上げる。
「ノエル、ずっと黙ってるけどあんたの意見はどうなのよ」
「あたしは……」
ノエルが生唾を飲むのがわかった。
「あたしは……柱を壊したい……。不合理だってわかってるわ……感情に流されて……愚かな判断だって……」
ジェシカの表情がわずかに和らぐ。ノエルは頷いた。
「あたし、行く。今日からまた遺跡に入るわ」
再び視線がウェルドに集まった。
居たたまれなくなって、ウェルドは目を閉じる。
砂漠が見えた。
故郷の砂漠。
遠い景色に逃げ込んで、自我が現実逃避をしようとしていた。
赤い砂漠。オアシスの村。隊商とラクダ達。
見えてくる……一見のどかな村……だけどテントから上る煙、炎、そして……。
「俺にはできない」
やっと答えた。
「俺に柱は壊せない」
全員の顔に、目に、ウェルドは睨みつけるような表情で立ち向かう。
「あいつを殺すって言うのか?」
「だったら何だ? パスカ。引き替えに誰が死んでも関係ないと? 会った事のない他人が何万人死のうとただの数字でしかないとでも? どんだけ死のうが殺されようが、それが目の前でなきゃ、自分の見えない場所で起きた事なら構わないってか!?」
「何もそこまでは――」
「そういう事だろ!? お前が言ってる事は!!」
「違う! 俺は」
「お前は自分の故郷がめちゃくちゃにされてんの見た事あんのかよ!」
「だったらあんたが死ねば良かったんだ」
ジェシカの声だった。
血の気の引く思いがした。
「柱に入ったままなのがあんただったら良かったよ。びっくりするほど薄情だね。ホント見損なったよ」
「ジェシカ」
エレアノールがたしなめようとする。が、肩に延びた彼女の手をジェシカは強く振り払った。
「あたしも行くよ。だけどあんたとは行かない。柱見つけても壊さない奴と行っても仕方がないしさ。それにあんた、見つけても黙ってそうだよな。そんな奴と行けるかよ! もういいいよ! あんたは部屋で寝てれば!?」
「もしディアスと俺の立場が逆だったら、あいつは――」
「それがどうしたんだよ! 柱を壊さないっていうのはあんたの意見だろ!? あいつは関
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