第五十五話 思春期H
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それは、一瞬の油断であった。
同じ任務についていた友人と同僚から、少し後方に位置する場所。彼女はサーチャーを使い、全体の指揮や敵勢力の把握にあたっていた。無人世界に逃げ込んだ、とある違法研究者を捕縛するための任務。頼もしすぎる味方のおかげで、旗色はこちらに傾いていた。
「(ん、前線と少々離れてしまったか。まぁ、この距離ならすぐに追いつく)」
前方、後方、と周囲に敵影がないことを魔法で確認し、上空に放っていたサーチャーをさらに拡散させる。違法研究者が作り出した質量兵器を使う機械兵士。蜘蛛のように壁を這うその姿に、任務に就いた誰もが最初は驚いた。だが、そこは管理局が誇る……精鋭たち。すぐに対応してみせ、研究者を追いつめていった。
「なんと、リアル蜘蛛男であるか……!」
「動きは似ているけど、全身装甲なのが残念ね。もう、こういうのは全身スーツで来るべきでしょう」
「糸を出しませんが、どうやらかぎ爪を使って移動できるようです。変則的な動きを持っているようですが、漫画からアニメ、テレビドラマに劇場版まで、ちきゅうやにある全シリーズに給料をつぎ込んできた私と勝負とは、笑止。偽物へ天誅ぅー!」
「おぉ、天誅であるか。我が魂に響くなんかかっこいい言葉ではないか。よし、俺もてんちゅーー!」
「お前ら、他世界のカルチャーに染まりすぎだろ! あとそこっ、勝手に前線に出ッ……破壊しまくってやがる……!」
「敵の敗因は、ファン心を刺激したことだな。彼らが目覚めた時、真の力を発揮するということか」
「そんなもん、敵も味方もわかるかァーー!!」
そんな会話をしながら、5人は任務を遂行していった。15歳の1人の少年が、仲間たちの行動に頭を抱える。ついでに胃痛にも悩まされたが、伊達に小学生から英雄と呼ばれるほど荒波に揉まれてきてはいない。彼のストレスは武力へと変換され、前線へと赴いた。何気に討伐数が一番多かった。
「そうだ、またみんなでちきゅうやに遊びに行くか」
前線に追いつくために、彼女は歩みを進める。あの時の会話を思い出し、任務が終わったら声をかけようと思考を巡らせた。彼女の所属するチームが、カルチャーに染まってしまった原因。管理局員にとって、あそこはやっぱり鬼門らしい。
そんな、注意を怠ってしまった瞬間。
「―――ッ!?」
目の前の地面の中から、複数の反応が突如として現れた。
蜘蛛男ということで、ずっと空を警戒し続けていた。サーチャーの大多数も空中を飛び回り、援護をしていたが、まさか地面の下から掘って来るとは。先ほどまでの蜘蛛男とは違い、装甲は薄く、小回りがきく小型の機械兵士のようだ。地蜘蛛と呼ばれる蜘蛛を連想した。
いくら善戦していたとはいえ、戦場で気を抜いてしまった己を
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