その名が意味するものは
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こちらを見ている事に気づいたのだろう。
ザイールは落としていた目線を上へと上げ、首を傾げた。
「どうした?俺の顔に何かついているか?」
「いえっ、何も」
首を横に振り、少女はぎゅっと拳を握りしめる。
こうでもしないと、また涙が出そうなのだ。
久しぶりに会った、親切な人。そんな人の前で泣いてばかりでいたくない。
「・・・ザイール、様」
「ん?」
声が掠れた。
言わなきゃいけない、と思うのに、言えない。
さっきまで問題なく出ていたはずの声が、突っ掛かったように出て来ない。
言いたい事はあるのに、言葉に出来ない。
「その、えっと・・・」
言おうと思ってる事は、決して長文じゃない。
声を掛けておきながら何も言わない事に不機嫌になっていないか・・・と思いながら、目線を上へと上げる。
ザイールは変わらなかった。
どれだけ時間が掛かろうと、言いたい事は全て聞く―――――そう言っているようにも、見えた。
「・・・シュランです」
それを見た時、何かがほどけた気がした。
変わらないんだと諦めていたものが、今日会ったばかりの青年によって、一瞬にしてほどけるような。
恐れていたものは恐れていたほど怖くはないんだと、少女は知った。
「私、シュラン・セルピエンテと申します。以後、お見知り置きを」
少女の名はシュラン。
そのラストネームは蛇を意味し、その名は蛇を意味する言葉から一文字抜いたもの。
彼女は名も、髪も―――――後に修得する魔法さえも。
―――――――全てが、仕組まれたように、蛇であった。
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