暁 〜小説投稿サイト〜
無欠の刃
幼い日の思い出
金色の落とし子
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
恐ろしく思え、九尾は無意識の内に体を震わせた。
 そんな九尾の様子に気が付くことなく、ナルトは笑んだ。

 「名前を知らなきゃ、友達になれないってばよ!」

 思わず、九尾は目の前の檻を掴み、がんがんと揺らした。
 威嚇攻撃ではない。もしもこの檻が無かったらば、確実に少年の喉を掴んでいただろう。そう思えるほどの覇気で、九尾は檻を掴んだ。
 けれど少年はといえば、少しだけ驚いたように体を震わせ。そしてまた、笑った。

 なんだ、この生き物は。

 また、そう繰り返した。
 九尾は知らない。こんな生きもの知らない。
 こんな、弱くて細くてもろくて、すぐに壊れてしまいそうで、脆弱で。なのに、九尾に意気揚々と、こんなにも好意的に接してくる生物なんて知らない。知る筈もない!!

 たった一人の、あの人しか知る由もない!!

 今は亡き、自分の親の様であったあの人の姿が瞬いた。

 ああ、恐ろしい。恐ろしい。
 恐ろしいのに、自分よりも数倍大きい獣が居るのに、なのになぜ、何故こんなにも、この少年は九尾を恐れないのか。
 無知なのかもしれない。無茶なのかもしれない。
 ああ、そうかもしれない。だが、けれど、なぜこの少年は牙をむく狐に笑えるというのだ!! 今の攻撃で死にそうだとか、そんなことは思わなかったのか!!
 誰だって気づく。今の威嚇は殺す気であったと。
 もしかして気づかなかったのか、ということは鈍感なのか。鈍感であればあればで、何故、この場から逃げない。恐ろしかっただろう、恐れただろう。
 来たことの無い場所だ。見たことの無いの場所だ。周りには誰もいない。周りには頼るものが存在しない。
 それでも、それなのに、なぜ逃げない!!

 疑問が脳を支配して、けれど答えは九尾には出せない。目の前の少年以外に、九尾の問いに対する答えを出せるわけがない。
 もう何もかもがわからなくなって、九尾は言葉を出した。

 「わしと、ともだちになるきか」

 たどたどしく、言葉を紡げなくなったわけではないだろうに、赤子のように不安げに声を紡ぐ。
 幾千年もの時を生きてきた同胞たちは、こんな九尾の姿を見たらあざけるように笑うのだろう。けれどそれ以上に、彼等もまた、九尾のようにこの少年を恐れる筈だ。
 だって、自分たちは知らない。
 こんなふうに近づいてくる生き物なんてものは、生まれてこの方、あの人以外では見たことが無いのだ。
 数千年の時を生きていながら、自分でもどうかと思うが、それでもそれが事実だった。
 もしかしたら、無知なのは少年ではなく自分たちなのかもしれないと、九尾は酷く矛盾した頭でそう思った。

「そうだってばよ?」
「あったばかりなのにか」
「誰だって、最初は初対面なんだってばよ?」


[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ