第五章
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ふと歌心をもたげさせたのである。
「あの」
そのうえで男に声をかけた。
「その筆と紙を」
「宜しいのですか?」
「はい。気が向きまして」
「それではどうぞ」
「はい」
紙と筆を受け取った。すぐにおもむろに書き出す。
花の木にあらざめにども咲きにけり古りにしこのみなる時もがな
さらさらと書いた。書き終えると男に手渡した。
「如何でしょうか」
「ふむ」
男は歌を受け取るとその目を確かにさせた。そのうえでまんじりと眺める。
「よいのではないですか」
「そう言って頂けると何です」
康秀はそう言ってもらえて気をよくした。にこりと笑う。
「しかしまた急な心変わりでしたな」
「そうでしょうか」
「しかしよきことです。やはり貴方には歌が似合う」
「ははは、褒めて頂けるとは」
もう康秀は普段の飄々とした康秀に戻っていた。世辞を笑って聞き流す。
だがふとあの花をもう一度ちらりと見た。花は変わらずそこに小さな姿を見せていた。
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