Development
第三十三話 蠢く思惑
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」
僕の言葉に苦笑しながら、それでも以前は見せなかった自然な笑みがそこにはある。
そんな表情を今は簡単に見せてくれるけれど、少し前には考えられなかったことだ。こうなってくると、僕が何故ああも敵視されていたのか気になってくる。
「ふふ、あの時の簪さんは私の話なんて聞いてくれませんでしたものね」
なので、話のきっかけになればとちょっと意地悪く言ってみる。
すぐに簪さんは真っ赤になりながら少し俯いてしまう。
「ぁぅ……ご、ごめんなさい」
普段と違った僕の物言いに怒っていると思ったのか、恐縮したように静かに呟く。
「あら、別に怒ってはいませんよ。簪さんがあのようなこと言うには相応の理由があったということでしょうから。でも、私には身に覚えがなかったので謝ろうにも謝れなかったんですよ?」
我ながら卑怯な言い方だとは思うけれどあの時は……今でもだけど本当に理由が分からなかったし取りつく島もなかった。それを聞くついでにちょっとくらい仕返しするくらい罰は当たらないと思う。
「あ、あの……怒らないでくれますか?」
いまだ縮こまった状態のまま、少し上目遣いで僕に問いかける。
その姿が、母親の前にいる悪戯がバレた子供のようで内心で苦笑しつつそれは表に出さないようにして頷く。って、それだと僕が母親じゃないか、違うよ!?
「……笑わないでもくれます?」
さらに頬を朱色に染めて問いかけてくる。僕は再び頷くも、その仕草になんというか保護欲のようなものが刺激される。これが母性本能……って違うよ、そんなものに目覚めて僕はどこに向かうのさ!?
そんな僕の心の内の葛藤なんて彼女は知る由もなく、話す決心がついたのか僕に真っ直ぐと向き直る。
「……羨ましかったんです」
紡がれた言葉は、予想外のものだった。
「羨ましい?」
思わず聞き返してしまう。羨ましい、というのがどうしてあの時の彼女の態度に繋がるのか、そもそも何に対してのものなのか理解できなかった。
「最初はお姉ちゃんと互角に戦った人がいるって聞いて、凄いなと思いました。たまに話すときでも、お姉ちゃんはあなたのことばかり楽しそうに話してました。そのとき、あぁこの人はお姉ちゃんに認められているんだな、って思って少し悔しくなって……」
そこまで聞いて理解した。やっぱりこの子は楯無さんのことを嫌ってなんかいなかった、と。
僕はなぜか自分が避けられていた理由よりもそちらの方が気になってしまっていた。
「ふふ、私は別にあなたから楯無さんをとったりしませんよ。それに、最近ではあなたの方が楯無さんを避けているように見えますが?」
僕がそう尋ねると、少し顔を顰めながら俯いてしまう。
彼女自身が楯無さんのこ
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