Development
第三十三話 蠢く思惑
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
。デュノア社とフランスへの監視と抑えは楯無さんが更識を動かしてくれる。正直、僕は双方のサポートくらいしかできない。
楯無さんは、この学園に特別な感情を抱いている。クラスメイトや生徒会の面々、そして何より妹の簪さんがいるこの場所……自惚れでなければそこに僕も入っている。
彼女はそんな学園を、友人達の平穏を脅かすことを何より嫌っている。だからこそ、それを齎す存在に対しては容赦はしない、それが例え個人であっても企業であっても国であっても……ISの開発者であっても。
今回、楯無さんがデュノアさんを抱え込む形をとったのは、もちろん彼女に対する多少の同情のようなものがあったかもしれないけれど、それ以上に黒幕に対する切り札になると思ったからだろう。
「ふっ、違いない。更識からは私の非常識な友人に近しいものを感じるからな、相手にとって碌なことにならんだろう」
皮肉を込めたようなその言葉の影には、未だ連絡の取れないその友人に対する若干の非難が含まれていたのは気のせいではないと思う。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「完成……しましたね」
僕の目の前で、雪のように白いISを身に纏う簪さんに向かって静かに声をかける。
千冬さんへの報告を済ませた僕は、最近の日課ともいえる整備室での簪さんの手伝いをしていた。
「はい。出力も最初の予測に比べて15%も上がっています。これも……西園寺さんのおかげです、ありがとうございます」
ISを待機状態であるクリスタルの指輪に戻しながら簪さんが僕の近くに歩み寄る。
あの日以来、簪さんとは彼女の専用機『打鉄弐式』の開発を一緒に進める中で徐々に打ち解けてきた。最初こそ余所余所しさや遠慮のようなものがあったけれど、今では以前のような棘のようなものは微塵も感じられない。
「あなたが……簪さんが変わったからですよ。私はそれに応えて、少し手助けしただけに過ぎません。私だって、楯無さんだって一人でできることは限られています。それを認めて、必要な助けを求めた上での結果なら、それはやっぱりその人の力なんですよ」
開発の過程で、僕は彼女に名前で呼んで欲しいと言われて応じている。『更識』では姉も一緒だから嫌だと言っていたけど、その顔は少し赤らんでいたのでその言葉は本心ではないのだろう。
一方の僕はそのまま何も言わず名字で呼んでもらっている。ボーデヴィッヒさんの一件のせいか、紫音と呼ばれることに少し抵抗を覚えてしまった自分を否定できないでいる。今まで意識の外にいた、自分以外の紫音という存在……姉である本当の紫音の存在が今では常にチラついている。
その名前で呼ばれるたびに、偽りの自分を目の前につきつけられているようで酷く不安を感じるようになってしまっていた。
「はい
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ