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高音
第三章
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。舞台が進むのを。
 そしてその第三幕の終盤でだ。遂にだった。
 二人は対峙し歌い合う場面になった。愛の成就の場面だ。
 しかしここでだ。ニルソンは。
 重いきり高音を伸ばしてみせた。それを見てコレッリもだ。
 これでもかと高音を伸ばしてみせる。二人の勝負がはじまった。
 コレッリにも意地があり必死に続ける。だが。
 ニルソンの方が強かった。彼女は最後の最後まで伸ばしてみせた。そうしてだった。
 コレッリに勝ち誇った笑みを見せた。その笑みを見てだ。
 コレッリは顔を真っ赤にさせて憤然としてだ。舞台を後にした。そのうえで。
 机に座りその机を拳にした両手で何度も叩きながらだ。こう叫んだのだ。
「恥をかかせてくれたな!」
 こうだ。ニルソンに対して怒りを露わにさせていた。

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