第四章
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第四章
「それをお伝えしたく参りました」
「そうですか。それではです」
「それでは?」
「実は国防省もです」
駆け引きだった。それが既にはじまっていた。
だがそれをお互いに表に出さずだった。
八条はだ。こう川口に話した。
「今考えていることがありまして」
「考えていることですか」
「アメリカのクロワーズグループに」
軍需産業で有名なグループだ。無論その他の多くの分野でも有名になっている。軍需産業だけでやっていっている企業というのもない。
「受注を検討しています」
「クロワーズ!?」
クロワーズと聞いてだ。川口は。
思わず箸を止めた。何故ならだ。
このグループは多くの分野において川口重工と競り合っているからだ。所謂ライバルグループだ。彼にしては負けるにはいかない相手だ。
その名前が出たからだ。川口は箸を止めたのだ。
それでだ。彼は八条に問うた。
「あのグループと契約して」
「政府としてもです」
話が大きくなった。軍事だけではなかった。
「他の分野での便宜も考えています」
「他の分野でもですか」
「軍需産業だけでなく」
八条はさらに言った。
「箸やダムの建設」
「それもですか」
「他にも。様々な分野で」
つまりだ。採算の乏しい軍需産業だがそこを突破口にしてだ。クロワーズグループは日本に進出を計ろうとしているということだ。それを聞いてだ。
川口は顔を曇らせた。そしてだ。
八条に対してだ。こう言うのだった。
クロワーズがそうなるなら川口重工はどうなるか。そのまま裏返しになることだ。そのことを瞬時に察してだ。彼は言ったのである。
「少し考えさせて下さい」
「軍需産業についてですか」
「はい、考えさせて下さい」
こう八条に言ったのだ。
言葉は何とかうわずらないようにさせて感情を見せない様にしてだ。
彼はだ。言った。
「暫くの間」
「そしてですね」
「また御会いしたいのですが」
「わかりました」
八条も表情を消して応える。あえてだ。
そのうえでだ。川口に述べたのだった。
「ではその時にまた」
「連絡しますので」
「御待ちしています」
こう話したのだった。こうしてだ。
この時はこれで終わった。しかしだ。
翌日だ。すぐにだった。川口は役員達を集めてだ。
また会議に入った。そこで昨日の八条との話のことを説明した。しかしだ。
役員達は口々にだ。苦い顔で言った。
「ですが採算がです」
「取りにくいですから」
「軍需産業はもう」
「撤退すべきですが」
「しかしだ」
ここでだ。川口は言うのだった。
「クロワーズグループが来るというのだぞ」
「政府関連で様々な分野にも進出するというのですね」
「政府が便宜を計
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