第三章
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第三章
「是非な」
「はい、それでは」
「御願いします」
こうしてだった。川口は八条と会い話をすることになった。その八条もだ。
川口から話をしたいとの連絡を聞いてだ。すぐにだった。
私設秘書の由良にだ。移動中の車の中でだ。こう話した。
「では受けよう」
「受けられますか、この会合」
「こちらから話そうとも思っていた」
彼の方でもだ。考えていたというのだ。
「好都合だ」
「では場所は」
「料亭がいいか」
「料亭ですか」
「川口社長とのお付き合いは長い」
それこそだ。彼が幼い頃から知っている。幼い頃はいつもプレゼントを暮れて温かい笑顔を向けてくれる優しいおじさんだった。
その彼と話すからだ。それでだというのだ。
「馴染みの店でだ」
「ゆっくりとですね」
「お話したい。だからだ」
「御二人の馴染みの料亭といいますと」
「砂原か」
日本の首都でもだ。有名な料亭の一つだ。懐石料理で知られている。
「あそこで御会いしようか」
「砂原で、ですね」
「そうしたい。あの店でどうか」
「わかりました」
すぐに答えた由良だった。そうしてだった。
川口との話の調整が裏方で行われだ。その砂原で会うことになった。
ある日の夜だった。二人はだ。
奥座敷の部屋で向かい合っていた。黒檀の卓を囲んで座布団に座っている。
部屋は襖と障子で仕切られ水墨画の掛け軸に見事な白い壺がある。天井は高く白い木だ。畳は新しくまだ緑色である。
その落ち着いた部屋の中でだ。二人はだ。
まずは笑顔で会釈をした。それからだった。
運ばれて来る料理を食べながらだ。話をするのだった。
「お久し振りです」
「はい」
川口が笑顔で八条の言葉に応える。
「如何お過ごしだったでしょうか」
「特に何の変わりもなく」
川口は温厚な笑顔のまま八条に応え続ける。本来はもっとくだけたやり取りができる関係だが相手は大臣だ。だからあえて畏まっているのだ。
そのうえでだ。川口は。
世間話、歌舞伎やオーケストラの話をしてからだ。徐々にだ。
話を本題に進めた。そこで言うのだった。
「実はです」
「何でしょうか」
八条は彼が何を言うのかわかっている。しかしだ。
それは表には出さずにだ。聞く感じで応えた。
「今日ここでお話されることは」
「今我が川口重工では企業全体の再編成を考えていまして」
「分野の刷新ですか」
「進出する分野と撤退する分野を検討しています」
「成程」
「それで、です」
ここまで話してだった。あらためてだ。
彼はだ。鶏肉を野菜と共に柔らかく似てあっさりと味付けをしたものを食べながらだ。八条に対して静かに言ったのである。
「軍需産業については」
「どうされるおつもりで
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