第一章
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第一章
軍需産業
連合の日本にあるだ。川口重工という企業ではある問題が起こっていた。
その問題は何かというとだ。ある産業に関することだ。
この産業についてだ。役員達は社長である川口悠人にだ。口々に話していく。
「設備投資が異常にかかりますし」
「技術投資も馬鹿になりません」
「ですが市場は限られています」
「そのことはもう御存知ですよね」
「知っているから今君達に来てもらった」
初老の男だ。恰幅がよくしかも温厚そうな顔をしている。彼がその川口悠人だ。川口重工の創設者の一族でありだ。父から社長の座を受け継いでいる。
温厚な人物であり人格円満、気品があるとされている。バランスの取れた経営で知られており部下の育成には定評がある。
その彼がだ。昔から知っている役員達に口々に言われていたのだ。
「採算という点では」
「正直お話になりません」
「傘下の川口石鹸や川口運輸は順調に業績を挙げていますし」
「重工自体も航空機や車が好調です」
「ですがあの分野はです」
「どうにもなりません」
こう言うのである。
「所有している球団は確かに赤字続きですが」
「それでも。あれは我がグループのいい看板ですから」
「採算は充分に取れています」
「しかしあの分野といいますと」
「何か差し引きゼロにしている状況です」
「そのゼロにしている状況も」
川口が重い口を開いて述べた。
「製品自体を高く売っているからだな」
「はい、手造りと言ってもいいあれをです」
「あれを売ることによってですから」
「国民からは批判の対象です」
「何しろ税金が関わっていることですから」
「そうだな。国民、ひいてはお客さんが怒るのも当然だ」
川口は深刻な顔になった。普段は温厚な顔をそうさせてだ。
そのうえでだ。こう言うのだった。
「我がグループへのイメージダウンにもなるな」
「そうです。なりかねませんし」
「我がグループのお荷物になりかねません」
「ですからあの分野からはです」
「撤退すべきだと思います」
「確かにな」
川口も腕を組み難しい顔になってだ。
そうしてだ。役員達に述べた。
「軍需産業というものはな」
「サハラでもその様ですが」
そのだ。彼等がいる連合の隣で千年もの間戦乱が続いているそのサハラでもだというのだ。軍需産業というものはだ。
「採算が取れません」
「設備投資も技術投資も維持費も莫大ですが」
「市場が限られていますから」
「軍艦を売るより歯磨きの方が遥かに採算が取れていますし」
歯磨きは誰もが使う。だが軍艦はそうではないのだ。
「あの産業からはもう撤退してです」
「芸能プロダクションでも持ちますか」
「芸能
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