§56 矜持と家族
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ル達くらいだった。そもそも人間と触れ合ったのが最近になるまでなかった。だから余計に新鮮に感じたのかもしれない。マンガなどを読んで家族関係に憧れていたのかもしれない。
「洗脳とかいうゲスい戦法使った以上、偉そうに言えないんだけどさ」
なるべく、巻き込まないようにしてきた。なるべく、金銭的負担にならないように、援助してきた。それも全ては罪悪感があったからなのだろうか。
「まぁ、クサいセリフ言ったところで俺に先手とられて後手に回っているワケだし? 何言っても絵空事だぜ?」
なかなか辛辣な事を言う奴だ。
「そうだね。だから言っただろう? ――――全力で潰しにかかる、と」
人間は基本的に助ける方針だ。だがそれは出来る範囲で、の話。家族や友人知人でもない限り、無理に助ける気は無い。
「一万匹の鳥や魚と千人の人間。どっちかを救うなら僕は迷わず鳥や魚を選ぶ」
それは、黎斗が幽世に引きこもる前に徹底していた事。環境を破壊する人間共を助ける必要性を感じなかったから掲げた志。大自然と触れ合う生活。
「……いきなり何言ってんの?」
その疑問に答えずに、黎斗の姿が変貌する。アレクサンドル・ガスコイン。黒王子の異名を持つ魔王に変貌した黎斗はとん、と軽くステップを踏んで。
「これで、最後の問題はクリア、だ」
大迷宮を作り、恵那や児童達を押し込める。
「……随分余裕だなおい」
「一応避難勧告は出した。時間も結構与えた。だから、こっから先は知らない」
そういう黎斗の目は昏い。
「シャマシュも効かない。スーリヤも効かない。オマケに白馬も効かない。完全な太陽アンチ能力だな」
「……まぁ、これだけやってりゃバレるか」
太陽神の権能が使えず、邪気が決定打となり得ない。やりにくい相手に見えるが、その程度今までも経験してきた。まして太陽を封じる権能は須佐之男命とやりあった時に散々煮え湯を飲まされた能力なのだから。
「じゃあこれはどうだ? ……エリ、エリ、レマ・サバクタニ! 主よ、何故我を見捨て給う!」
そう言って男が唱えるのは殲滅の言霊。
「使う意味ないから」
冷めた口調で言うと同時に男の言霊が霧消する。サリエルの邪眼を前にして、あらゆる魔術は意味をなさない。ましてや人間程度が使える魔術など。
「ゥヒヒ、お前も無効化すんのか」
嗚呼――――本当に、苛立つ笑いだ。
「変化――――斉天大聖・孫悟空」
分身するのは、強大な力を誇る東洋の猿神。変化と同時に、筋斗雲で空高く。
「ハッ、逃がさねぇよ!!」
宙を飛び追ってくる男を尻目に身を震わせる。自身の毛が、周囲に飛び回る。逃げるつもりなど最初からない。この時間が欲しかっ
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