第一物語・後半-日来独立編-
第七十三章 終息へ向かう時《1》
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
竜神を上へと突き上げるように、無惨に傷付いている顔を左の拳によって打ち上げた。
衝撃が音になって皆に伝わり、砕けた甲殻が落ちるのと反対に、竜神自身は顔を始めとし身体が天へと上がった。
さすがに幾ら強烈な打撃を打ち込んでも、巨大な竜神を数メートルうち上がるのが精一杯だ。
けれどそれで良かった。
言葉を紡ぎ、
「日来長!」
天を見上げる玄次郎の目に映る、高い場所にいる日来の長。
右腕の青い、人外の腕が流魔の光を放っている。
見るや否や直感というもので玄次郎は、右腕の力を感じ取った。面白い、そう思ったのは強敵になりうる存在を目にしたからか。
いずれにせよ、何時かは手合わせ願いたと思った。
「そりゃあありがてえなあ!」
振りかざす憂いの葬爪は竜神の顔面に狙いを定めた。
打撃の衝撃で動きの取れない竜神は避けることが出来ず、落下してくるセーランをただ見詰めるだけだ。
どうにか動こうとする竜神だが結局は震える程度でしか身体は動かず、玄次郎による打撃とセーランによる攻撃を立て続けに受けることとなった。
憂いの葬爪を振り下ろし、竜神の顔へ爪を突き刺した。
甲殻は砕け、宙に散る。
「イメージすれば力になる……イメージすれば力になる……」
呪文のように唱える。
暴れ出したならば身動きが取れなくなる。
ゆっくりしていては竜神にペースを持っていかれてしまうので、決めるならばこの一回のみ。
幾度も訪れた機会。
もしこれが最後ならば、もう無駄には出来無い。
「流魔全部吸収してやるよ! 竜神だろうが神だろうが戦うなら全力もって勝ちにいく。日来の覚悟ナメんなあああ――!!」
渦に巻き込まれる水を想像し、渦に自分、水に流魔を当てはめる。
吸い込むように水を巻く渦。
単純で強力な想像。他にもセーランの意思の変化もあってか、早くも現実空間に具現化した。
光る憂いの葬爪は活性化の証拠だ。
目に見えている竜神の身体が微かに薄く、淡い存在となっていく。
放たれる流魔光のしぶきが吸収の激しさを感じさせ、その場にいた玄次郎にある感情を呼び起こした。
コイツは何時か化ける。
興奮という名の恐れ。玄次郎以外ではなく、今のこの状況を見た実力者ならば思った筈だ。
宿り主を無しにしても、蓋を閉じた底知れぬナニカ。そのナニカが現状解らないのも恐れの一つの原因か。
なんにせよ見れば分かる。
彼も自ずと踏み込んでくる、実力者達の世界に。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ