第一物語・後半-日来独立編-
第七十三章 終息へ向かう時《1》
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な」
これを期に会話は終了し、これまで以上の速度で駆け出した繁真。
仲間を思う気持ちは人一倍なのだろう。
残されたセーランも一呼吸した後。
「奏鳴が待ってんだ。……やってやる」
誰かに向かって言ったのではない。
独り言のような言葉。
奏鳴のためにも竜神にやられるわけにはいかない。
小さな決意に呼応するかのように、微かに光る憂いの葬爪に気付かないセーランも繁真に続いて地上を目指した。
宿り主としての力の使い方を知らない。
自分もまだまだなのだと思いながら宙を行く。
そしてその場に誰もいなくなり、それぞれが目的の場所へと近付いた頃。空がうるさく音を奏でる。
違う。空が奏でているのではなく、活性化した竜神の甲殻が破裂している音だ。
竜神の身体が自身の活性化によって耐えられず、存在が崩れ始めている。
黄森にとっては好機だ。時期を待てば竜神は消滅するのだから。
かえってセーランにとっては、肝心の奏鳴の流魔が吸収出来無いのだから急がなければならなくなった。
自身の身体が傷付こうとも、狙いは央信であることを変えてはいない。
周囲に展開された防御壁を全身を使い打ち砕き、最後の接近を行った。
戦闘艦は長への進行を防ごうと、砲撃や防御壁を展開し、副砲さえも射ち鳴らす。
直撃するものは幾つもあり、進路を塞ぐ防御壁も少なくはなかった。しかしそれをもろともしない竜神が勝り、央信への接近を許してしまった。
誰かなんとかしてくれ。
何処の誰が思ったのかその思い。
応えるものは誰なのか。
日来か辰ノ大花か黄森か、国か世界か。それとも神なのか。
いや、そのなかに人は含まれていたのか。
重なり合うように二人の者達が、一瞬の間に行動を起こした。
●
双角を持つ甲殻系魔人族が竜神の前に立ちはだかる。
地上からの跳躍で竜神と対等の高さに達し、魔人族はにやりと笑うように口を曲げる。
動じる様子は無く、むしろ喜んでいるように思えた。
跳躍から落下へと運動が変わる際、表示した足場に着地し待ち構える。
身体が武者震いから、感情と共に奮えている。
久し振りの後に引けない戦いが、彼の闘志をたぎらせた。
「いいね、いいねえ! すっげええいいねえええ――!!」
甲殻系魔人族である天桜学勢院の制服を身に付ける、朱色の甲殻を持つ天桜覇王会隊長、九鬼・玄次郎が叫んだ。
好戦的な玄次郎にとって強敵を目の前にすることは最高の幸せであり、自身の力を存分に発揮出来る機会と対峙する瞬間でもある。
魔人族は他の種族とは身体能力が優れている点が多く、それゆえに並大抵の相手でない限りは手加減をしなければ重傷を負わせてしまう。
再び言うようだが玄次郎は好戦的だ。
そのため不用意に相手に重
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