暁 〜小説投稿サイト〜
とらっぷ&だんじょん!
第二部 vs.にんげん!
第20話 つみのろうごく!
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男共にむごい扱いを受け、二度と戻ってこれない真っ黒い世界へと売り払われていった。
 ある少年は密かに金をためて自由を得ようとした。さすらいの吟遊詩人が夢だったそうだ。彼は夜、主人に隠れて大麻売買の仲介人として働き、結局大麻に手をつけて、右も左もわからぬ廃人となってしまった。
 自分も彼らと何も違いはしない。結果に救いがあるかどうかというのは問題ではなく、夢を抱き夢に人生を賭けた、その動機と経緯が同じなのだ。
 論文一つで世界を変える事ができると信じていた。
 思いこそすれ誰も口に出さない事、それをあえて明確にすれば、何かが、時代が、世界の現状が変わると信じた。いい道化だ。
 神はいない。学問は必ず神の不在を証明する。
 それを言ったのは自分が初めてではなかったのだ。ただ、世に広まる前に抹殺されていたまでだった。
「あら」
 女の声、そしてヒールの踵の音が洞窟内に木霊する。顔を上げた。
「イヴ!」
「一人になりたくて来るにはあまり向いてない場所だと思うけど。って、どうやら本当に一人みたいね。あなたの事、騎士の坊やが血相変えて探し回ってたわよ」
「お前こそ」
 ウェルドは気まずいのを隠すために、ぼさぼさの髪を掻きながら立ち上がった。
「意外だな、人助けのためにこのクソ暑い場所にわざわざ来るなんて、一番しそうもねえくせによ。何やってんだ? あんたも一人か?」
「一人になりたいとこだけど」
 イヴの後ろ、洞窟の曲がり角からオルフェウスが現れた。
「また君ですか」
 彼は悲しそうに眉を垂らした。
「せっかくイヴさんと二人きりになるチャンスだと思ったのに、ついてないなあ」
「……逢引きにくる場所でもないと思うぜ?」
「冗談じゃないわ。彼が勝手について来ただけよ。あたしはどんな場所なのか興味があって見に来ただけ」
「見に来て、どうだ? 楽しいか?」
「全然」
 ウェルドは背中の鞘から大剣を抜く。
「じゃ、俺は先に進むぜ。あんたらはどうすんだよ?」
「付きあってあげてもいいわよ。……あなたは帰れば?」
「時の行路図が使える場所まで、一人で魔物の群れを突っ切って帰れと言うのですか? 冗談じゃありません」
 ニコッと笑い、
「ご一緒させていただきますよ。ま、僕は働きませんけどね」
 ウェルドはうんざりして溜め息をつきながら、煉獄の奥に足を踏み入れた。
 ティアラから渡された煉獄の地図を頼りに歩き、未だ探索されていない洞窟の内の一つにたどり着く。
 赤々と溶岩に照らされる世界。ドーム状の空間は熱に満たされており、ひりひりと肌が痛い。汗は、かいた端から乾いてていく。砂漠の昼を思い出す。地を埋めるものが砂ではなく岩、潜む脅威が蟻地獄ではなく溶岩、という違いはあるが。
 長い岩石の橋の向こうに、魔物達が蠢いていた。
 見
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