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ロウきゅーぶ 〜Shiny−Frappe・真夏に咲く大輪の花〜
Three
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ろ」

容赦は無かった。数秒でけりをつけるつもりだった。フェイントも何も無い速攻、風が吹き抜けるようにボールをかすめ取る。
ボールは自分の右手の中にあった。それをそのままドリブルしゴール手前にまで走る。他愛もない、だが本気で完膚なきまでヒナを負かさなければならなかった。
息を吸う。いつものフォームでゴールを見据える。かなり低いゴールネット、それでも狙いは一つ。膝を屈め、腕を伸ばした。
……しかし。

「行けっ……っ!!!?」
「気付かなかったみたいだね」

先程自分が見せた神速を越えるスピードで、ヒナはゴール前に移動し、その身長に見合わない跳躍でボールを奪い取った。
類稀なる努力の末フォワードとしての適性を開花させたヒナのスピードとジャンプはあの時と比べても遜色ないどころか遥かに上回っている。
だがそれ故に非常に腹が立った。全てが彼女の筋書き通りだったのかと思うと、非常に腹立たしく怒りがこみ上げてくる。

「っ……まだ終わってないっ!!!!!!」

どちらも本気だった。ヒナは自分の武器を最大限生かし低空ドリブルのままスピードを以てひっかきまわす。自分もそこまで背が高い方ではないがヒナのつくボールは非常に奪い辛い。
小学生用の狭いはずのコートがこんなにも広く感じるなんて……そしてやっとコーナーに追い詰めた、一対一ではボールをパスする相手もいやしない。時間は残り十秒、強引に当たりヒナの機動力を無効化しボールを奪う、時間が無い、私はゴールましたに入り込み、そのまま高く跳びあがった。

「くっ……させるかっ!!!!!」

ヒナの最高点は私の最高点よりも高かった。このままではダンクを決める前にボールを弾かれてしまう。以前もこんな事があった、同じ境遇で対策を練っていないわけが……

「無駄だぁあああっ!!!!!!」

ダンクでは無く、ほぼ垂直にボールを打ち上げる。ヒナの手はボールをかすめ、ボールは上空へと投げ上げられる。ヒナとボールは同じように重力に引かれ、その距離は伸びこそすれ縮む事は無い。

『頑張れ、マホ……っ!!!!!!』
「……っあぁああぁああああっ!!!!!!!!」

フッ……ガタンッ、ガタンッ、ガタンガタンガタンガタンッ……
ドン、ドン、ドン、ドン……

「……………」

タイミングも狙いも完璧だった。だがヒナの掠めた右手がボールの軌道を僅かに変化させ、枠に散々弾かれたボールはネットの外へ転げ落ちたのだった。少なくとも周囲はそう思っていた。

「……………」
「あっ、待てよみs……」

美星の説得も聞かず、踵を返してその場を後にする。悔しさと哀しさをその身に湛えたまま。

「あんた……バスケ辞めたって……」
「ああ、そ
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