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空を見上げる白き蓮 別事象『幽州√』
第一話 友を得る白馬
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たかった。桃香のように、『私』に対して気持ちを伝えてくれているから。
 胸の中にぐっと熱いモノが湧いてきた。
 つまり徐晃は私が何を為したいかこれから示せと、そう言っている。私が自分の上に立つのに相応しいのか、どんな命令でも飲み下せるようなモノが私にあるのかとそう問うている。

――いいだろう。認めさせてやる。私がどんな気持ちでこの地を治めているか、どんな想いで平穏を作り出しているか。全てを見た上で私の力になってくれ。

 牡丹は少しだけ不機嫌になった。部下としてそれは当然で、でも何も言わないのは……私がどんな気持ちか考えてくれてるからか。
 こんなあからさまな気遣いにいつも気付かないでいたなんて……牡丹の事を全然見ていなかったな。後々、しっかりと牡丹とも話す必要があるかもしれない。
 でも今は、徐晃に答えを返そう。

「徐晃、初めは客将でいい。子龍と同じような扱いをするからそのつもりでいてくれ。
 ただ……これだけは知っていて欲しい。この地は私の家だ。私の大切な家族が暮らす、私の大事な宝物だ。だから出来るなら、一緒に守りたいと思ってくれたなら、私の側で守って欲しいんだ」

 一から作り上げてきたこの場所を思うと少し泣きそうになる。自分だけの心の底からの想いを分かってほしくて、私は震える声を紡いでから頭を下げた。

「ぱ、白蓮様! そんな軽々しく――」
「今は酒の席なんだ牡丹。だから此処に居るのは公孫賛じゃない。『私』の想いを伝えたいだけだから目を瞑ってくれ」

 顔を下げたまま言い切ると牡丹は口を噤んだ。ああ、やっぱり私は今まで牡丹をちゃんと見てなかったみたいだ。

「趙雲殿、俺はこの人の事を見誤っていたらしい」
「奇遇ですな。どうやら私も目が曇っていたようだ」

 言いながら、徐晃は俯けた私の顔の前に杯を差し出した。

「なあ、公孫賛殿……いや……あー、伯珪さん。あんたの気持ちは伝わった。顔を上げてくれ」

 ゆっくりと顔を上げた。そこには少しの後悔が滲む真剣な眼差しが二つ。

「伯珪さんの想いを低く見てすまなかった。主従、というのはまだ分からないけど、この地に居る限り、伯珪さんの大切な宝物を守る手助けをさせてくれ」
「私もどうやら自分に酔っていたらしい。申し訳ない。あなたの事を見ずに、気持ちすら一寸たりとも理解出来ていなかった。
 だから伯珪殿、もしよろしければ星と呼んで頂けませんか?」

 驚愕。子龍が真名を許すのはよほど認めた相手でなければしない。
 牡丹や桃香達と真名を交換したのは知っていたが……私に対してはまだだったのに。
 きっと私がダメなんだと思っていた。でも違ったんだ。私が自分を見せようとしなかったから、彼女は言ってこなかった。
 牡丹の事を見ても、子龍の事を見ても、
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