三十三 崖底蛙
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に動けるのは多由也だったからだ。
故にその間、自らが囮となって大蛇丸と彼の部下達の目を向けさせる。またザクに関してナルトが沈黙を貫いたのは、彼の身の安全を保障するためであった。
ナルトは同班のドスとキン、二人を同時に失ったザクを少なからず気にしていた。だからせめて大蛇丸の毒牙にはかからぬよう、今回の会談で取り計らっておく。
相手の言葉や反応を深読みする大蛇丸の性格を逆手に取って、敢えて黙する。そうすれば少なくともザクをただの捨て駒にはしないだろう。
「どう見ても、ソレ、大蛇丸様が木ノ葉の誰かと繋がってるって証拠だよな。それも里の上層部と」
自らが撮ってきた写真を覗き込みながら、多由也は眉根を寄せた。彼女の言葉に答えぬまま、ナルトは瞬時に指先から青白い炎を出現させる。写真は音も無く、虚空に溶けてしまった。
ちろちろと宙を舐める炎を握って揉み消す。多由也に見守られる中、事も無げに「大方、火影の椅子を狙う者だろうな」とナルトは答えた。
「それはどういう、」
「ダーリンッ!!」
多由也の質疑を断ち切って、香燐がナルトに駆け寄った。初めて見る顔に、多由也のこめかみがぴくりと反応する。なによりダーリンという呼称が気に触った。
「帰りが遅いから迎えに来たぜ」
「迎えだと?」
ナルトより先に多由也が声を上げた。一歩前に出る。
「気色悪い呼び方しやがって。失せろ、この眼鏡女」
「あ?」
多由也の存在に今気づいたらしい香燐もまた、ひくりと口端を動かした。多由也に眼を付ける。
「初対面で眼鏡女とか呼ぶ奴に、呼び方云々を文句言われる筋合いなんかねえな。つ―か、お前こそ消えろよ。ウチとダーリンの邪魔だ」
「ハッ!邪魔なのはそっちだ。今はウチがナルトと話してんだよ。出しゃばってくんじゃねえ!!」
「出しゃばってんのはどっちだ!ウチはダーリンに命救われたんだぞ!!」
「それがどうした!?ウチのほうがナルトとつき合いが長いんだ!ぽっと出の眼鏡なんざお呼びじゃねえんだよ!!」
額を小突き合わせる。互いに互いがナルトに好意を持っていると把握した少女達は、鬼も逃げ出すのではないかというほどの物凄い形相で相手を睨みつけた。
何が原因でこのような険悪な空気になったのか理解出来ないものの、彼女達の口論に口出ししてはいけないと、ナルトは直感した。大蛇丸以上の緊張を覚えたと、後に彼は語ったという。
滝が飛沫を上げ勢いよく流れ落ちる。激しさを含む水飛沫は太陽光に反射し、空に小さな虹をつくり上げた。
鮮やかな色彩の架け橋に、滝近くで水浴びをしていた女性達が歓声を上げる。同時にその茂み向こうで、少女の弾んだ声がした。
「ほら見ろ、エロ仙人!【口寄せの術】成功だってばよ!
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