藍椿
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詰めるのが分かった。俺は何でもないように答える。
「いや、今はしてない。ラウ姉たちがいないからな」
「え?それって・・・?」
そう、ラウ姉とリオンさんはもうこの世界にはいない。
実感がわかない。俺はその瞬間を見ていたはずだ。なのに、それが、自分の記憶が信じられない。
俺が黙り込んだのを見て、代わりに口を開こうとしたレナを制して、俺は吐き出した。
これを言うのは藍椿の中では先輩である俺の役目だ。
「死んだよ、ふたりとも」
「っ!?」
そう、もう彼女たちはいない。
それを認めたくはない。だが、それは揺るがない、どうあっても変わらない事実。だから・・・・。
「たまたま、最前線に上がって来ててな。そこで、他のパーティを庇って・・・・それでな・・・」
あの時、俺にもっと力があれば・・・。何度もそう思う。それ以来俺は、自分の無力さを呪い、一度もパーティには入りはしなかった。ひたすらソロでレベルを上げ、攻略組に登りつめるまでになった。
今では元の考えに戻ったものの、それでもあの日のことは忘れたことが無い。いや、二度と忘れられないだろう。
この力があの時あれば、彼女達を助けることができたのだろうか。この答えが出ることもない。
「それにしても、よく立ち直りましたね。先輩」
「ま、レベルだけ作業のように上げてても、楽しめないって分かったからな」
あの事件以来、ほとんど忘れかけていた《楽しむ》という行為を思い出したのは、最前線の近くで、あるプレイヤーたちを偶然助けた時だった。
「迷宮区で突然、近くでアラームトラップが鳴ってな。潰しに行こうと思って行ったら、成り行きでそこにいたパーティ助けたんだ。助けたと言っても、何人かは間に合わなかったけど・・・。それでも、終わった後、ふとラウ姉のこと思い出してさ。それで、今の自分は何やってるんだろうって思って、そこで立ち直れた」
本当に偶然の出来事だった。あれが無かったら、俺はすっと、この世界が終るまであのままだったかもしれない。そう考えると、不謹慎だがあの事件には感謝している。
「よし、この話はここでやめ。元の目的に戻ろうか」
一度手をパンと鳴らして、場の雰囲気を打ち切る。もうこの話はこれくらいでいい。全く藍椿のことを知らないシリカには、この話は重すぎた。
「レナ、俺を呼んだからには、何か理由があるんだろ?」
「あ、そうでした。つい昔話に花が咲いてしまいましたね」
レナは立ち上がって奥の壁に立てかけてあった槍を掴むと、俺に向き直る。
「久しぶりに、決闘してくれませんか?」
笑みを浮かべて、本来の目的を言った。
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