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剣の丘に花は咲く 
第三章 始祖の祈祷書
第八話 伝説
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 敵は空からの絶大な支援を受けた三千。我が軍は砲撃で崩壊しつつある二千……勝ち目は、ない。







 
 士郎に頭を軽く叩かれた瞬間、機体が大きく揺れ、ルイズの手から“始祖の祈祷書”が離れた。“始祖の祈祷書”が開き風防の中を蝶の様に羽ばたくと、ルイズは焦りながら開いた“始祖の祈祷書”の端を掴んだ瞬間。
 唐突に“水”のルビーと“始祖の祈祷書”が光りだした。
 





 恐る恐ると光の中に見える文字を、ルイズは目でなぞっていく。
 それは……、古代のルーン文字で書かれていた。真面目に授業を受けていたルイズは、その古代語を読むことが出来た。

『序文

 これより我が知しりし真理をこの書に記す。この世のすべての物質は、小さな粒より為る。四の系統はその小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。その四つの系統は、“火”、“水”、“風”、“土”と為す』

 こんな時なのに、ルイズの知的好奇心が膨れ上がる。はやる気持ちを抑えながらも、一枚一枚確実に確認しめくっていく。

『神は我にさらなる力を与えられた。四の系統が影響を与えし小さな粒は、さらに小さな粒より為る。神が我に与えしその系統は、四の何れにも属せず。我が系統はさらなる小さき粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。四にあらざれば零。零すなわちこれ“虚無”。我は神が我に与えし零を“虚無の系統”と名づけん』

「虚無……の系統。うそ……っ!」 
 
 鼓動が一つ強く鳴った。“始祖の祈祷書”を握る手が震える。

 
 膝の上でかぶりつく様に“始祖の祈祷書”を読むルイズの様子を見た士郎は、危険がないことを確認すると、顔を上げ、ラ・ロシェールの港町の頭上に浮かぶ巨大戦艦に目を向けた。
 今の今まで黙っていたデルフリンガーが声を上げた。

「相棒、親玉だ。雑魚をいくらやっても、あいつをやっつけなきゃ……お話にならねえが……」
「分かっている……というかデルフいたのか?」
「相棒が持ち込んだんだろ」
「まあ、そうだが」

 非難が込められたデルフリンガーの声に、やっと士郎の顔に表情が浮かんだ。苦笑いが浮かんだ顔で、士郎が脇に置いていたデルフリンガーを見下ろした。 

「それで、どうするんだ相棒? これじゃ、逆立ちしても無理だ」
「……方法はある」
「はっ? あるのか?!」
「……ああ」

 被我の戦力差が、文字通り象と蟻ほどあることを理解したデルフリンガーは、士郎の予想外の答えに、驚愕の声を上げた。

「ああ。だが、このままでは無理だ。一旦下に降りなければ」

 士郎が下に降りることをルイズに伝えようと、顔を下に向けると、ルイズの決意を秘めた鳶色の瞳とぶつかった。








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