第三章 始祖の祈祷書
第八話 伝説
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ルイズは縋り付くように士郎の外套を、“始祖の祈祷書”と共に握り締めた。あの不思議な夢を見た時から、漠然とした不安を抱いていたからこそ、士郎に無理を言って乗せてもらったのではないか。それなのに自分は何をやっているのか……結局自分は何も出来ないで震えているだけなのか。
士郎の膝の上で、俯きながらルイズは自嘲気味に小さく呟くと、ポケットに入れていたアンリエッタからもらった“水”のルビーを取り出し、落とさないよう指に嵌め、その指を握り締めた。
「……シロウはわたしが守るんだから」
小さく、しかし強く呟いたルイズは、士郎の外套から手を離すと、馬車の中で詔を考えるため持っていた“始祖の祈祷書”を両手で持つと胸に抱えた。
何も書かれていない“始祖の祈祷書”……何の力もないわたしだけど……もしもこれが本物なら……士郎の力になって……!!
“始祖の祈祷書”がシワになるほど、ルイズが強く胸に抱きしめると、
「……ワルドか」
「え?」
冷たい声がルイズの耳に届く。
思わず士郎を仰ぎ見たルイズの目に、凍えるように冷たい目をした士郎が頭上を仰ぎ見ていた。
視線の先には、風竜に乗ったワルドが狂った狂相を浮かべ、こちらに向かって急降下してくる。
狂声を轟かせるワルドの様子が、あまりにも恐ろしく、ルイズは身体を回すと士郎の腰に抱きついた。腰に抱きついてきたルイズの頭を安心させるように軽く叩くと、士郎は急降下しながら風竜のブレスや“エア・スピアー”を放ってくるワルドの攻撃を危うげなく避ける。
奇襲を避けられたワルドだが、匠に風竜を操ると、ゼロ戦の背後をとり、攻撃を仕掛ける。
―――はっ……っハハハハぁぁぁぁ〜あああああああああああアアアアアっ!! 死ね死ね死ねっ!!―――
背後で狂った声を上げ、背後から怒涛の勢いで襲い来るワルドを、士郎は奇襲を受けたというのに微動だにしない顔でチラリと見る。ゼロ戦を急激に減速させた士郎は、操縦桿を左下に倒すと共にフットバーを蹴り込み――天地が回転した。
―――アアアアアっ?!―――
ゼロ戦が目の前で消え、驚愕に目を見開いたワルドだったが、全身を貫く殺気を感じ振り向こうとした――が、
「馬鹿が」
線を描くように打ち込まれた機銃弾により、火竜よりも鱗の薄い風竜の身体は穴だらけにされ、ワルドも肩、背中に弾を食らい、ワルドを乗せた風竜は地上めがけ落下していく。
背後から攻撃を仕掛けてくるワルドに対し、士郎はゼロ戦を壜の内側をなぞるような軌道を描くと、竜に乗ったワルドの背中に回る。士郎の世界で“木の葉落とし”と呼ばれる妙技でもってワルドを降した士郎であったが、落ちていくワルドを一瞥もすることなく、機首を遥か上空、雲の隙間から覗く巨
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