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剣の丘に花は咲く 
第三章 始祖の祈祷書
第八話 伝説
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飛ぶ竜騎兵を貫く。
 士郎は無言で操縦桿を、左斜めに倒すとスロットを絞る。
 機体を捻らせ、タルブの村目掛けゼロ戦が急降下を始めた。

「一騎とは、舐められたものだな」

 向かってくる影を迎い撃つため、竜を上昇させながら騎士が呟く。
 見たこともない奇妙な竜に疑問を浮かべながらも、騎士はこれまでに撃墜した二騎のトリステインの竜騎兵と同じように仕留めようと急降下してくる竜騎兵を待ち受ける。

「三匹め―――」

 口の端を歪め、笑おうとした竜騎兵であったが、竜とは思えない速さで迫る竜に驚き、顔が笑おうとした直前の奇妙な表情で固まる。
 慌ててブレスを吐かせるため、火竜に口を開けさせた。だが、火竜が口を開けた瞬間、急降下してくる竜の翼が光った。白く光る何かが無数に飛んで来たかと思うと、騎乗する竜の翼、胴体に大穴が開いた。その内の一つが開いた火竜の口の中に飛び込んだ。火竜の喉にはブレスのための燃焼性の高い油が入った袋がある。その喉の奥で機関砲弾が炸裂し、その袋が引火し、火竜は爆発した。



 空中爆発した竜騎士の横をすり抜け、士郎はゼロ戦を急降下させ続けた。その間にも、士郎は周囲の状況を把握し、竜騎士の位置を確認する。
 味方をやられ、躍起になって向かってくる竜騎士を、冷静に十字の光字の光像を描く照準器のガラスの中心に入れると、敵の攻撃範囲から遠く離れた場所から機関砲弾を火竜に叩き込む。
 ゼロ戦の攻撃範囲と攻撃力を知らない竜騎士達は、気付いた時には既に遅く、機首装備の七.七ミリ機銃で穴だらけにされ絶命し、バタバタと地上に落ちていく。

「す、すごい……すごいじゃない士郎っ! 天下無双と謳われたアルビオンの竜騎士が、まるで虫みたいに落ちてくわっぷ」
「落ち着けルイズ」
 
 膝の上で子供のようにはしゃぐルイズの額に手を置き、士郎は自身の胸に押し付けた。急に士郎の胸に押し付けられたルイズは、顔を真っ赤にさせると、士郎の顔を仰ぎ見た。

「何よシロ―――」
「新手だ」
「シロウ?」
 
 何騎もの竜騎士を落としながらも、士郎の顔には何の表情も浮かぶことはなく、新たに迫る竜騎士を睨みつける。まるで人形の様な士郎の様子に、戸惑うような声をルイズは上げるが、士郎はそれに応えることなく、機体を太陽に向け上昇させた。ある程度の高度までたどり着くと、機体を反転させ太陽を背にし、ゼロ戦を急降下させた士郎は、ゼロ戦を追いかけ上昇してくる竜騎士たち目掛け、淡々と機関砲弾と機銃弾を叩き込んだ。





 士郎の膝の上で、ルイズは士郎の外套を握りしめて震えていた。

 シロウ……一体どうしたの。

 周囲を飛び交う竜騎士達は確かに怖かったが、それよりも大好きな士郎が、まるで別人になったような不安が身を包み、
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