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少女1人>リリカルマジカル
第五十四話 思春期G
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ィオールは乾いた笑みを浮かべ、脱力してしまう。それでも、ずっと重かった肩の荷が、少し軽くなったような気がした。彼女は自分のために、一緒に考えてくれる。それに恥ずかしい気持ちと、嬉しい気持ちが彼の中にはあった。

「うーん、魔法のことだけど、ティオ君の悩みは魔力量と素質が悩みなんだよね」
「まぁ、うん。僕の場合、本当に平均値しかないんだ。戦闘をすれば魔力は減っていくし、威力のある魔法なんて早々撃てない。近も中も遠も、中途半端な技量しかないと思う」
「……ティオ君は、魔法合戦が不安なの?」
「そ、うかも。うん、そうだと思う」

 アリシアの問いに、ティオールは小さくうなずく。自分の力量は自分が一番わかっているからこそ、不安だったのだ。みんなの足手まといになってしまうかもしれないことが、怖かった。彼の言葉に、アリシアは顎に手を当てた。

「むぅー。私はティオ君って、すごいと思うんだけどなー」
「いや、僕なんて何も…」
「だって、ティオ君は魔力の扱いがすごく上手なんだよ。放出も圧縮も。リンカーコアの勉強をしているからわかるけど、流れがすごく綺麗なの。あといつも冷静に状況を分析できるし、それに避けるのが上手なお兄ちゃんに、いつも的確にツッコミを当てられる反応速度があるでしょ」
「あの、ア、アリシア?」
「それに勉強だって得意だし、お兄ちゃんが赤点を取らない様にわかりやすく教えてあげたり。わざわざプリントまで作ってきてあげちゃうし。クラ校のお母さんとして、頼りにされていて、世話焼きスキルもすごく高いと思うなー」
「クラスのお母さんポジションから、いつの間にかレベルアップしていないか!?」
「うん、やっぱり私は、ティオ君が何もできないだなんて思えない。きっとティオ君だからこそ、できることがある。持っているものがある。魔法だって、夢だって、絶対になんとかなるよ」

 自分には何ができるのかすらわからない、と嘆いた少年を勇気づけるように、励ますように、アリシアは言葉を重ねる。ティオールは少しずつしみ込んでいく言葉に、もう本当になんと言えばいいのかがわからなかった。

 ティオールの悩みを理解してくれているからこそ、彼女が彼に語ることが、軽い気持ちで言ったわけではないとわかるのだ。心から真っ直ぐに応援してくれる、支えてくれているのだ。だからこそ、怖くなってしまう。アリシアの言葉に甘えてしまうことに、変わってしまうことに。

「僕は、そんな……アリシアが言うほど、大そうな人間には…」
「むっ、それは聞き捨てならないかも」

 頬を膨らませたアリシアは、少年との距離をぐっと詰める。それに驚き下がろうとした身体は、彼女が彼の腕を取って、目を合わせたことで防がれてしまった。近距離で、自分を上目遣いに見上げてくる美少女。彼女は一切目を逸らす
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