第五十四話 思春期G
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とことん頑張っていこう。1人じゃ辛くても、一緒に手を握ってくれる人がいるのなら、歩いて行ける。その結果、たとえ見つけられなかったのだとしても、一緒に泣いて、笑ってくれたら心からきっと受け入れられる。
アリシアからの笑顔のお願いに、今度はアルヴィンが目を見開く。それに彼女は、してやられた分を返せたようで満足した。そして2人は噴き出し、知らず識らずの内に笑っていた。
家族や周りを盛大に巻き込み、大嵐のように吹き荒んだ兄妹喧嘩。雨のように流した涙と、暴風のように吹き抜けた様々な思いは、こうして幕を閉じたのであった。
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「でね、その後も色々大変だったんだ。お母さんにはすっごく叱られて、ウィンが数日間私にべったりで、お兄ちゃんは難しい魔法の本を読んで、知恵熱を発症させちゃったりでね」
「なんというか、想像以上というか、予想の斜め上というか、そんな喧嘩だったんだね…」
テスタロッサ家のリビングで、向かい合って話をしたアリシアとティオール。アリシアの話は彼女の視点のみのものであったが、30分ほど語る時間を要した。当時のことを掻い摘んで話したとはいえ、その内容は相当なものだろう。
ちなみに、その時アリシアと遭逢し、認知された「おじさん」だが、今でも時々メールのやり取りをしているらしい。家族からの反応と、11歳になったことでアリシアは、彼の正体に薄々勘づいてはいる。だが未だに「おじさん」呼びなことには、察してあげてほしい。原因はほぼ向こうにあるのは、断言できる。
「……なんか、僕の悩みがすごく情けなく感じてきた」
「むっ、私はそんなつもりで話したんじゃないよ。私の場合、誰にも頼らなかった所為で、悪化しちゃった部分もあるんだって今ならわかるもん。悩みの大きさは、比べるものじゃないと思うよ」
どんな大きさの悩みだろうと、辛いのはみんな同じなんだから。そう言って、微笑む彼女にティオールは頬を赤らめながら、視線を逸らす。この話を聞いたからかわからないが、彼にはアリシアが、急に大人びて見えた。
「さっきティオ君が、私に悩みを話してくれた時、すごくほっとしたよ。友達だもん、いくらでも相談にのってあげたい。だから、それを謝る必要も、自分を責める必要もないの。私は、ちゃんとティオ君と向き合いたいな」
「……ありがとう、アリシア」
耳まで真っ赤になった少年は、もうそれだけしか言えなかった。
「あ、あのさ……その、結局アリシアはその喧嘩の後、どうしたの?」
心臓を落ち着かせるように深呼吸をしたティオールは、さっきの話を聞いて気になったことを口にした。持っていないことに悩み、それでも頑張ると決めた少女のことを知りたかった。アリシアはそれに、照れくさそうに笑みを浮かべた。
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