第五十四話 思春期G
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も必要なものはたくさんあるだろう。その難しさを、そしてそれでも見つからないかもしれないという結果を、言った本人が先ほど口にしたのだ。それなのに、探してくると言ってくれた。
アリシアのために、妹の笑顔のために、アルヴィンは探してきてやると言ってくれたのだ。
『―――お兄ちゃん!』
アリシアの記憶に甦るのは、金色の光の奔流が襲いかかってきた時の光景。美しく恐ろしいと感じた光は、確かに彼女の中に恐怖を作った。だが、アリシアが一番怖かったのは、兄に置いて行かれたかもしれないことだった。
一瞬であったが、アルヴィンの目はアリシアを一切映すことがなかった。ずっと頼りにしていた人から、見捨てられてしまったかもしれない震え。アリシアの声にすぐに正気を取り戻した彼に、彼女は安心し、同時に深い傷を残した。もし、本当に見捨てられていたら――? その思いが、兄への依存を、誰かに置いて行かれる恐怖心を強めてしまった。
アリシアは思い出した「始まり」と、しっかりと向き合う。置いて行かれることに、見捨てられてしまうことに、ずっと怯えていた少女。だがそんな彼女に勇気をくれたのは、待っていると言ってくれた友人たち、温かい家族、そして手を掴んでくれた兄。その記憶が、アリシアの穴を少しずつ埋めていった。
「……ううん。お兄ちゃんだけに、そんな大変なことはさせられないよ」
「えーと、そりゃあ大変だろうけど。だけど、俺は本気で…」
「うん、知っているよ」
アリシアの大切な人たちは、ちゃんと自分を待っていてくれる。受け止めてくれる。そう……信じよう、と思った。頑張ることは大切だけど、1人で全て頑張らなくていい。お互いがお互いを信じ合って、一緒に頑張ることができる。アリシアは、そう思えた。
「あのね、お兄ちゃん」
「ん?」
「ずっと抱え込んで、相談もせずに、1人で魔法を使って怪我をして、……いっぱい心配をかけてしまって、ごめんなさい」
アルヴィンに、そしてここにいる家族へ向けて、アリシアはしっかり頭を下げた。
「アリシア…」
「私ね、お兄ちゃんが言うとおり魔法を使いたい。私が魔法を使いたいって最初に考えた気持ちは、あんまり良いものじゃなかったと思う。だけど、それでもね。すごい魔導師になれなくてもいいから、私は自由に魔法を使ってみたい」
だって、本当にキラキラしていたから。初めて魔法を見せてもらった時の感動を、覚えているから。自分の魔力光を知った時は、嬉しかったから。魔法と触れ合う日々が、決して辛いことばかりじゃなかったから。あの日々を、色褪せたものにしたくない。
「だから、私が魔法を使えるように相談にのってください。私を、手伝ってください!」
どうしても諦めたくないのなら、やれるところまで
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