第五十四話 思春期G
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ん切りはついているはずなのに、もう枯れるぐらい泣いた目から、また涙が流れそうになった。それに頭を振りながら、アリシアをずっと抱きしめてくれていたウィンクルムを、彼女もギュッと抱きしめ返す。寄り添ってくれる小さなデバイスたちから、笑顔と勇気をもらうことができたから。
「だから、私は大丈夫!」
真っ直ぐに、意思を込めて、アリシアは笑顔で覚悟を口にした。
「異議あり!」
「えぇっ!?」
そして、突如として到来した嵐によって、吹っ飛ばされてしまった。
「お、お兄ちゃん?」
「アリシアよ、いい言葉を教えてやろう。諦めたらそこで試合は終了です」
『ここでネタに走りますか』
反射的にツッコミを入れてしまったコーラルのことなど、なんのその。アリシアたちがいた小さな広場の入り口に、堂々と乱入者は佇んでいた。彼の後ろには、プレシアたちが頭を抱えていた。エルヴィオとウィンクルムは、唐突に変わった空気に置いてけぼりを食らった。台風以外の何ものでもなかった。
せっかく自分のために、みんなのために、覚悟を決めたのに。それに反論を返されたことには、さすがのアリシアも怒った。
「あ、諦めたらって、諦めるしかないんだよ! 私は魔法の才能を持っていなくて、使うことができない! そのためのリンカーコアの手術を受けたら、死んじゃうかもしれないのにっ!」
「俺だって、アリシアに死んでほしくないから、手術なんて受けさせるつもりはないよ」
「だったら、どうやって私が魔法を使うの!?」
「アリシアのリンカーコアに適した専用のデバイスを作ったり、ゲームみたいに使用者の魔力を使わないで発動する魔導具を製作するとか、治療や魔法が使えるロストロギアを探したり……あと、何かあるっけ?」
あっけらかんとした解決方法に、アリシアは大きく口を開けて放心してしまった。空想のような、現実的ではない方法ばかりであったからだ。軽く遺物使用宣言までしている。確かに自分の力だけでは達成できないのなら、他の力を使う手もあるだろう。それでも、突拍子がなさすぎた。アルヴィンはアリシアの反応に、少し笑みを深めた。
「そ、そんなのできないよ、いつもみたいに冗談は…」
「内容はぶっ飛んでいると思うけど、……冗談でアリシアの思いを、踏みにじるつもりはないよ」
彼は一歩妹との距離を詰めると、そのまま真っ直ぐに歩き出した。
「自分が持っていないものを、持ちたいと思って何が悪い。それに絶対にない、なんて言えないだろ。確かに難しいさ。時間だってかかるだろうし、お金や労力だってものすごくかかると思う。大変だし、そこまでしたのに見つけられないかもしれない。だけど―――可能性はあるだろ?」
アルヴィンの言葉が、アリシアの瞳を揺らす。彼だって、世の中
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