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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十話 皇帝の地位
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いう不安感を持っている人はそれ以上に多いでしょう。」
私が答えると彼方此方から“ジレンマだな”、“その気持ち、分かるよ”という声が上がりました。

「でもどこの委員会も国防費を狙っているからね。厳しいと思うよ」
モンテイユ委員が言うと会議室に笑い声が上がりました。デロリアン委員も苦笑を浮かべながら“勘弁して欲しいなあ”と言いました。私も勘弁して欲しいです。戦争をしたいとは思いませんが不景気は困ります。

「増やせとは言いませんよ。でも前年度並みぐらいには欲しいです。二千億ディナールの臨時収入も有ったんですし国債だって減ったでしょう。実質増収じゃないですか。和平も決まったわけじゃないんだから国防費削減は気が早すぎるんじゃないですかねえ」
「まあ今までが多すぎたからね、どうしても目の敵にされるよ。でも和平が確定していないのも事実だ。どうなるかな」
デロリアン委員とディーレン委員の会話に皆が頷きました。

「旗色悪いですよね。ネグロポンティ委員長は新任だし今一つ押しが弱いから……、前任者がやり手過ぎたからなあ、やり手過ぎて議長になっちゃった」
皆が笑いましたがデロリアン委員は情けなさそうな表情をしています。中年サラリーマンの悲哀、そんな感じです。

「まあパジャマ着てないし装甲服も着てない。スーツだけでこの難局に向かうのはちょっと厳しいよなあ」
リード委員の言葉にさらに笑い声が募りました。デロリアン委員も今度は“酷いなあ”と言いながらも笑っています。

TV電話の呼び出し音が鳴りました。何だろうと思いながら受信すると最高評議会の広報担当から“重大な政府発表が十五時から有るから必ずニュースを聞くように”と連絡が有りました。最近政府発表が多いです。皆も“なんですかね”、“十五時ってもうすぐですよ”と話しています。チャンネルをFBC(自由惑星同盟放送協会)に合わせました。

十五時になると画面が切り替わって何処かのプレスルームが映りました。
「これってここじゃありませんか?」
「みたいですね」
「トリューニヒト議長? まさかウチの委員長って事は無いわよね?」
アブローズ委員の問い掛けに皆が顔を見合わせました。

嫌な予感がします。ヴァレンシュタイン委員長は隠密行動が得意なんです。もしかすると私達に外交委員会、通商委員会の組織作りをさせ本人は別の事をしていた可能性は十分に有るでしょう。この場合の別な事とはおそらくは和平に関する事のはずです。

プレスルームに議長が入ってきました。その後ろにヴァレンシュタイン委員長もいます。どうやら予感は当たりそうです。議長がマイクの前に立ちました。
『えー、皆さん。これから非常に重大な事を御報せします。自由惑星同盟と銀河帝国は両国が抱える二百万人以上の捕虜を交換することで合意しました』
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