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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十話 皇帝の地位
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無いと申しております』
調印はアマーリエというのは譲れぬという事か……。
「レムシャイド伯、理由は何だ? 何が有る?」
あの男が拘る以上何らかの意味が有る筈だ。スクリーンに映るレムシャイド伯が目に見えて緊張を露わにした。
『同盟からはトリューニヒト議長が調印するそうです。国家元首同士による調印にしたいと』
思わず唸り声が出た。
「つまり格という事か。ブラウンシュバイク公や私はあくまで臣下。トリューニヒト最高評議会議長とは格が釣り合わぬと」
リッテンハイム侯の問いにレムシャイド伯の顔が歪んだ。
『言い難い事ですが』
また唸り声が出た。今度はリッテンハイム侯だ。
実務レベルの会談は実力者同士で構わぬという事だな。だが調印式というセレモニーは形式を整えたいという事か。
「どう思う、ブラウンシュバイク公」
「うむ、……我らはこれまで同盟を反乱軍として蔑んできた。和平を結ぶとなれば対等の関係を求めてくるのは道理だ。それを受け入れるかどうか、その事を調印式で示せという事だろう」
“私もそう思う”とリッテンハイム侯が頷いた。
神聖不可侵、全宇宙の支配者、それが銀河帝国皇帝だ。対等の者など有り得ない。だが同盟と和平を結ぶとなれば当然だが対等の関係という事になる。実際和平交渉ではその部分をどうするかが一番揉めるところになる筈だ。ヴァレンシュタインは調印式でその障害を取り除けと言っている。
『ヴァレンシュタインはこちらが帝国の領土であるイゼルローン要塞に赴くのだという事に留意して貰いたいと言っておりました』
「なるほどな、こちらの顔は立てたという事か」
『はい』
溜息が出た。リッテンハイム侯が顔を顰めてわしを見ている。
帝国領内で調印式をするとなれば形式的には同盟側が捕虜交換を請うという形になるだろう。調印式の式場として他に候補地が無いという事も有るが立場はこちらが上と見る事も出来る。帝国において不平を持つ人間にも説得は出来るだろうという事か。
トリューニヒト議長への遇し方が悪ければ彼の体面を潰す事になる。今後の事を考えればそのような事は避けるべきだ。賓客として遇すべきだろう。最高級のもてなしをするとなれば主人自らのもてなしである事は間違いない。帝国の主人、つまりアマーリエだ。そういう形をとることで後々問題になるだろう障害を取り除けとヴァレンシュタインは言っている。
「手強い相手だな。調印式にここまで意味を持たせるとは」
溜息が出た。
「同感だが、如何する、公」
「さて……」
結論は見えている、和平を望むのであれば避けては通れぬ事だ。だが口にする事が出来ぬ。銀河帝国皇帝の尊厳に関わる事なのだ。五百年間守られてきた唯一無二の地位が揺らごうとしている。一度口に出せば戻る事は出来ぬ。
『宜しいでし
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