志乃「飯」
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えは良いが、やっている事は幼児以下だ。
「だから自然に俺は『自分が強い』と思っちまった。道場の記憶なんか放り出して。今の事だけを考えてた。俺は自分に酔ってたんだ」
「……今更お前の過去を掘り返すつもりは無いけどさ。ケジメついてないんなら今が最後だぞ」
健一郎が優しめに言ってくる。だがその言葉は果てしなく現実だった。
そして、それを機に俺はカラオケボックスという小さい箱の中で吠え続ける事になる。
*****
それから約三十分後、俺達はカラオケ店から退出した。もう歌うような気になれなかったのだ。
「……その、ありがとう」
「いや、気にすんな。まぁ、こういうのはいつでも付き合ってやっから」
カラオケで歌う以上に声を張り上げて喉がゴロゴロする。帰ったらちゃんとうがいしないと。喉は大切にな。
今日はあまり歌えなかったけど、すっきりしたな。俺、やっぱ溜めこんでたんだな。健一郎には感謝だな。
「なんか帰りに食わね?俺奢るぞ」
「マジで?伊月がそんな事言うなんて初めてじゃね?」
「うっせぇ」
そう言って俺達は近くのラーメン屋で飯を食った。こりゃ、夕飯食えないかも。
やっぱり、俺はまだ過去をひきずっていた。
道場での屈辱、反動して中学での歓喜。自分は強いという勘違い。結果、俺は本格的な剣道を決意した。
でも、そこで俺は知った。この世は不平等の塊であると。そして、俺はやはり『無能』なのだと。
全て自業自得だった。そう思う度に、俺は今までの人生が無駄にしか感じられなくなる。
だから俺は言う。
それがどうした、と。
『無力』で何が悪い。弱くて何が悪い。俺はここにいる。死んでなんかいない。
この挫折が俺を強くさせるのか、それは分からない。けれど、こんなところで人生を諦めてはならないというのは事実だ。
俺が始め、俺が終結させた曲がりくねった道。確かにそれは誰もが見ても一笑に付されるものなのだろう。
だが、そこから学んだものが確かにあるという事まで笑われたくは無い。
こんな俺でも、少しは強くなれたと心の底から思いたい。
帰りにラーメンを食べて、俺は健一郎と別れた。とは言っても家はすぐ近所なんだけどな。
家に着いた時はもう十八時を回っていた。やべ、腹が重い。
「ただいまー」
俺が玄関に上がってリビングにのんびり歩いて行くと、そこには妹が一人ポツンとテレビを見ていた。……って、あれ?
「志乃……母さんは?」
「……」
無視かよ!もしかして怒ってらっしゃる?
あー超めんどくせぇなこれ。こうなるとご機
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