志乃「飯」
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めたい。俺は入学前から教師陣から目を付けられていると言っても過言では無いからだ。
そう割り切って試験には臨んだ。きっと何とかなると思っていた。けれど、やっぱりダメだった。もう少しで四月に入るが、ここで俺の頭は絶望に塗り固められていた。
今でさえ俺は苦しい。感覚的なものだが、俺はこうして生きている事が苦しく思う。
だからこそ、俺は自らを励まそうとする。危険に立ち向かう時だからこその治療薬だ。
「俺は歌う。それこそが生きる理由だ」
自分にそう言い聞かせ、無理に納得する。それこそが萎えた心を癒す方法だ。これ以外に思い浮かぶものが無い。
あるとすれば、今の状態だろうか。
俺は今、幼馴染の一人とカラオケに来ている。こうしてカラオケで思いきり歌う事でストレスを解消出来るかもしれない。カラオケを舐めてはいけない。これは終わった後にすっきりさせる効果があるのだ。
「おい伊月。次お前の番だぞ」
幼馴染の三村健一郎がカラオケ機器を弄りながらそう言ってくる。こいつとはよくカラオケに行く。野球部所属の坊主で、普段は休みなど無いのだが。
こいつは、俺から言わせれば『出来る』人間だ。負け惜しみとかじゃない。本当にそう思っている。
俺が剣道を始めた一年後に、健一郎は野球を始めた。その頃からこいつは野球としての才覚を芽生え始め、半年程で少年野球チームのレギュラー入りしていた。
それから中学校に入っても常に活躍する存在として知られ、何件か推薦も来ていた。だが、こいつは地元の県立校に入り、野球部部員として精を出している。四月からの俺からすれば同じ学校の先輩になるわけだ。
俺がマイクを持ち、曲が流れてきて歌いだす。いつもながら、健一郎は俺が歌う時いつもリズムに乗っている。知らない曲を歌おうが互いに知っている曲を歌おうが、必ず楽しそうにリズムに合わせて足や指を動かしている。今だってそうだ。足でリズムよくタイルを打っている。
「お前が後輩かー」
曲を歌え終えて、予約曲の無くなったカラオケボックスに健一郎の声が吐き出される。
俺は自虐的な笑みを浮かべる。
「俺をコキ使ってもいいってわけだ」
「んなバカなことしねぇよ。ただ、惜しいなーって思った」
「惜しい?」
俺が純粋に疑問を返すと、健一郎が俺の顔を見ながら苦笑する。
「だって伊月、剣道あんだけ頑張ってたじゃん」
……その言葉に、イラッと来た。
こいつが悪いわけでは無い。ただ、同じような事を退学直後にいろんな人に言われてきたのだ。
葉山伊月は剣道が上手い。かれこれ九、十年やっている。いつも真剣に取り組んでいる。こんなとこ
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