志乃「兄貴、情けないよ」
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惑をお掛けしてしまって」
俺が深々と頭を下げ、志乃もそれに習って曲を聴きながら少しお辞儀をする。こいつ、さっきと全然違うぞ。
そんな俺達を見ながら、おっちゃんは最後にこう言い残して逆方向に歩き出した。
「まぁ、変に目立とうとするようなチンピラよりはマシだけどね」
*****
夕方の一件から数時間。俺は自室のベッドに寝転がり、この先の事について考えていた。
もう少しで四月。俺は一つ下の学年からまた高校をやり直す。それがどれだけ辛くてしんどい事なのかは分かっていた。けど、これだけはどうしようもなかった。全部、俺がいけないんだから。
俺は現実を受け入れなくてはならない。他の剣道部員から逃げた現実を、受け止めなければならない。
もう逃げるなんて事は許されないんだ。俺は前を向かなくちゃいけないんだ。
俺が行く学校は近所の公立校で、部活も学力も平均程度の影の薄い学校だ。
だが、二年生には俺の知り合いが少なからずいる。けど、逃げちゃいけない。それらを全部背負わなくちゃならない。
それらを確認して、俺は瞼を閉じた。
そこに広がるのは無限の暗闇。きっと俺の心もそんな感じなのだろう。
……つい数時間前までは。
今の俺にはやりたい事がある。
それは他人から見れば下らないものなのかもしれない。これについて本気で勉強してる奴らには、「舐めてる」と言われても仕方ないかもしれない。
けど、俺は文句を言わせない。これが俺のしたい事なんだから。
歌を上手くなりたい。そして、志乃が思い描いている絵を完成させたい。
そのためには、俺が完成した下書きに絵を入れなきゃいけない。
あいつはピアノの実力者だ。もう下書きは完成してると言ってもいい。
だから、俺はその絵に色を付ける。歌声という色を付ける。
それこそが、志乃の希望なら。俺の楽しみなら。
いくらだってやってやるさ。
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