暁 〜小説投稿サイト〜
打球は快音響かせて
高校2年
第四十三話 裏目
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

「……名前で呼ぶなと、いつも言ってるだろうが!」

背伸びして鷹合の頭をはたく浅海。
少しその目が潤んでいた事には、誰も気づいていなかった。

<8番ライト剣持君>

鷹合の同点弾の余韻冷めやらぬまま、続いて打席に入るのは途中からライトの守備に入っている剣持。1年生ながらベンチに入っている実力者だ。

(……俺の前でこんな盛り上がられると、ちょっと俺の肩身が狭いなー。でも、そもそもこんなヘロヘロPにここまで苦労しとるんがおかしいんちゃ。)

途中までベンチから試合を見ていた剣持は、スタメン陣が何故こんな遅い球のピッチャーに手玉に取られているのか、一向に分からなかった。そして、こんな“打てそうで打てない”というタイプは、ベンチに居る本来控えの選手が打てたりするのである。

カーン!

剣持の打球も、右中間を破っていく。ライトの仲宗根が素早く追いつき、中継に返すが、余裕のスタンディングダブル。ホームランの後は二塁打。三龍が一気に流れを引き寄せる。

「……どうやら、魔法が切れてもうたみたいやの」

南学ベンチでは、神谷監督が腰を上げた。

「中村、レフトに入れ」
「ハイ!」

ベンチ前で慌ただしくキャッチボールしていた選手が、レフトのポジションに駆けていく。
それと同時に、翁長がマウンドを降り、ベンチに戻っていく。内野の観客席から、翁長に温かい拍手が送られた。


ーーーーーーーーーーーーーーー


<南海学園高校、シートの変更をお知らせ致します。ピッチャー翁長君に代わりまして、中村君が入り、レフト。レフトの当山君がセンター。センターの知花君がピッチャー、以上に代わります。1番ピッチャー知花君。3番センター当山君。5番レフト中村君>

翁長に代わってマウンドに上がったのは知花。翁長と同じサウスポーだが、投球練習を見る限り、翁長よりはかなり速い。ピッチャーらしい球を投げていた。

「キッチリ送れよ。」

ネクストで素振りを繰り返す安曇野に、渡辺が声をかけた。

「俺が絶対帰すけん。」

渡辺の表情には、鬼気迫るものがあった。
流れを変えるきっかけになった牽制死。その借りを返したいのだろう。

「おう、任せるわ。8割打者の渡辺さんに。」

安曇野は、渡辺の州大会打率を引き合いに出し、笑って打席に向かった。

<9番ファースト安曇野君>

無死二塁。絶好の勝ち越しのチャンスに、アルプススタンドからはチャンステーマが響いてくる。

「「「大チャンス到来 やりたい放題
お祭り騒ぎで打ちまくれ
ドヤ顔でお立ち台へ 夢の甲子園掴み取れ」」」

大音量の「グッキーチャンテ」。全校生徒による大応援に、安曇野はシビれた。

(ヒーローになれねぇのは残念やけど、ま
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ